7/30/2024

de novo DSA and ABMR

1.de novo DSA(dnDNA)

 dnDNAによるABMRは、preformed DSAによるABMRに比べて蛋白尿が多くtransplant glomerulopathyを起こしやすくグラフト予後が不良な傾向にある。dnDNAは移植後5年で15-25%に起きるとされ、リスク因子にアドヒアランス不良、免疫抑制薬の減量、高率のeplet mismatch、若年、先行するTCMRなどが挙げられる。

 免疫抑制薬のなかで特に重要なのはタクロリムスで、同薬中心のレジメンはシクロスポリン中心のレジメンに比べてdnDNAが生じにくい。タクロリムスのトラフ濃度を下げ過ぎないことも重要で、最初の1年は少なくとも7-8ng/ml以上、1年後からは5-6ng/ml以上でdnDNAを予防できる。

 ただし長期のCNIは腎毒性を生じるため、施設や症例によってはBelataceptへの切り替えが考慮されることは以前に述べた。BelataceptがdnDNAを生じにくいのは、Tfh(follicular helper T)細胞がB細胞を活性化・分化させるのに必要なB7/CD28共刺激シグナルをブロックするためと考えられている。

2.MHC Class

 クラスIはほぼすべての細胞にあり、他者(ウイルス、がんなど)に侵された際に抗原を提示して自らを細胞傷害性(CD8+)T細胞に破壊してもらう警報のような役割をしている。HLAクラスIIは抗原提示能を持つ細胞にあり、貪食した細菌などをヘルパー(CD4+)T細胞に提示して、CD8+T細胞やB細胞を活性化・分化させる。

 現在腎移植ではクラスIのHLA-A・BとクラスIIのHLA-DRの3×2=6 allellesをマッチングの対象にしているが、抗HLA抗体はクラスIIに対する抗体のほうがクラスIに対する抗体よりも消えにくいことが分かっている。

 HLA-DQ・DRをマッチさせればグラフト予後を改善できるが、クラスII抗原はクラスIよりも多型が多く、そんなことをすれば移植を受けられる患者は激減してしまう。現行のA・B・DRですら、2/2/2ミスマッチと分かっていても免疫抑制でなんとかしている。

3.Eplet

 抗HLA抗体が認識するのは抗原の一部であり、その15-22アミノ酸配列(直径1.5nm程度)をepitopeと呼ぶ。抗体の認識に決定的な部位はさらに小さく、数アミノ酸配列(直径0.3nm程度)しかない。これをepletと呼び、あるHLA抗原に固有のものと、他のHLA抗原と共有されているものがある。

 現在では前述のおおざっぱなHLAミスマッチだけでなく、eplet mismatchや、アミノ酸配列レベルのミスマッチまで調べることができる(epitopes.netやhistocheck.orgなどのソフトフェアがある)。そして、当然ながら同じHLAミスマッチでも、eplet mismatchが多いほどDSA産生やグラフト喪失のリスクが高いことが知られている。

 ただし、すべてのeplet mismatchが同じリスクなわけではなく、アミノ酸配列や極性、親水・疎水性などに左右される。どこに何個どのようなミスマッチがあると総和リスクはどれくらいかが分かるようになるのは、もう少し先のようだ。

4.Pathogenicity  

 すべてのDSAが同じ拒絶リスクを持つわけではない。MHCクラスについてはすでに述べたが、高MFI、IgG3サブクラス、C1q結合能はリスク因子である(そもそも、IgG3は全サブクラスのなかでもっとも補体結合能が高い)。また、Fc部分の糖鎖配列、抗原との親和性、グラフトにおけるHLA抗原の分布なども影響すると考えられている。