2/26/2010

幸福

 患者さんをきちんと診察して、何が起きているかわかり、それを説明でき治療できる。後輩にも教えることができる。いまそれが楽しい。好きな音楽に囲まれて、好きな本を読んで、好きなことをもっと知りたくて調べて、好きな所に出かけてゆき、感動する。いまそれが楽しい。好きこそものの上手なれ(Love comes around while doing things you like)。ふさわしい時と場所を得て深めてゆければそれに越したことはない。好きでないことをさせられることを考えればずっと恵まれている。
 知を愛するのはよい、善く生きる(アレテー)のもよい。でも何かmissingしていないか?と思っていたら内村鑑三の『余は如何にして基督信徒となりし乎』に出会った。彼の博学は博学のためというよりも、何か彼の中に核があって、信念があって、その結果学んでいるようだった。また彼は「罪は梃子であり、基督信徒はそれにより神の御子を通じて神の高みまで、マルクス・アウレリウス型の男や女の全く達し得ない高さにまで昇る」という。原罪のことは知っているけど、この言葉の意味はよくわからない。どきっとした。

primary care physician

 地域医療の月が終わった。外来診療をちゃんと勉強する機会が内科にいると余りない中、PCPの仕事ぶりを肌で感じることにより外来の要領がつかめた。それにより、自分自身の外来も時間内に必要な要素をいれてしかも患者さんを満足させることができつつある。何事もまず見て学び、やってみるのが早道である。長年フォローすることで得られる医師患者関係は、もはや絆と言ってもよく、一つの望ましい医師像をみた。またオフィスで一緒に働くMA(medical assistant, 診察前にバイタルサインをとるなどする医療助手)、医師達は家族のようで、人生そういうふうに過ごすのも生甲斐かもしれないなと思った。まだ先かな、もう少し転々として学び続けたい。

2/18/2010

Diversity

 旅の翌日は、また旅で雪降るNYはLa guadia空港へ。翌朝着いた病院は、Bronx一帯の比較的貧困なエリアをカバーするCity Hospitalで、とにかく忙しそうだった。ERも100室くらいあった。米国ではたいへんめずらしい一室6床の病棟があった。フランス語しか通じない(西)アフリカ移民、スペイン語しか通じないヒスパニック、中国語を話す人、アルバニア語を話す人など、きわめて多様なdemographicなのはさすがNYという感じがした。私の友達が働いているlower Bronx(全米有数の危険地帯)ほどではないみたいだが、いっぱいTraumaは来るみたいだった。Manhattanから通うことも不可能ではないみたいだが、交通の便はあまり良くない。病院近隣は、そこまで危険ではないみたいだが、もはやNY近郊なのでこれといって何もないエリアだ。

2/13/2010

Tips for the interview

 フェローの先生に昼ごはんを食べながら「面接の秘訣は」と尋ねたら、プログラムが自分に合っているかを見極めることが大事だ、それが分かるような質問をすることが大切だとのことだった。自分を売り込むとか、採用してもらうように媚びたりお願いしたりとか、そういうことじゃないんだなと改めて痛感した。インタビューじたいはプログラムを知るための機会、そのうえで、いろいろ回ってやっぱりここがいいと分かったら、その時には「以下の理由と事情で私はどうしてもここのプログラムがいいです」とプログラムディレクターにメールすればよいとのことだった。マッチングは、「絶対取る(絶対行く)」と「絶対取らない(絶対行かない)」の間の不確定な領域を取扱うのでストレスもあるが、自分にできることはBe yourself、know yourself、そしてknow the program very well。

2/11/2010

from my heart

 面接対策をしていてつくづく思うことは、心からの言葉でなければ伝わらないということだ。心からの言葉ならば、後から何があっても後悔はない。しかし、心からでないことを言うと、その結果がどうなっても(たいてい悪くなるけど、もしならなくても)後悔する。とくに私は、口だけのことをいうとすぐ気持ちがこもっていないことが分かってしまうらしい。気を付けなければ。

2/10/2010

aftermath

 コンサートの翌朝、やはり私のクルマは頼もしく雪など無いが如く病院に到着した。しかし、ハイウェイが通行止めになったりしてこれない先生たちが続出した。結局、病棟チームのカバーで後輩の先生のサポート役として働く予定だったのが、チーム全員15人の患者さんを独りで診ることになった。少し時間はかかったが、短時間で患者さんを把握するのも訓練のうちであり、患者さんや病棟の皆にも感謝されたのでよかった。

 病院からの帰りもスムーズだったが、いざ家の前まで来たら屋内駐車場への入り口が30cm以上の積雪でふさがっている。一気に疾走すれば大丈夫かと思ったらはまってしまった。ちょうど外に出てきた近所の方に手伝ってクルマを押してもらい、なんとか脱出することができた。少しでも雪深いところは、タイヤが嵌まるというよりもクルマが浮いてしまってタイヤが地に着かなくなるので注意が必要だ。それからは慎重に運転したので問題はない。

2/03/2010

Practicality

 二月は日本の研修で言う「地域医療」に相当するであろうambulatoryで、開業医のofficeで外来診療を手伝う仕事だ。今日楽しかったことは、現場の機転や実学志向を生で学べたことだ。たとえば、どうにも肩から指先まで変な感覚がとれないという患者さんがやってきて、私は脳、頚髄、腕神経叢、肩から指先まで走る神経、そして筋肉とどのレベルが問題なのかをじっくり問診と診察で定めようとした。どうやら頸椎のすべりか何かが原因そうだと思われたがよく分からない…というところで指導医の先生にバトンタッチした。
 その先生は診察して、さっそく少用量のgabapentinと物理療法士(によるリハビリ)を処方した。たしかに頸椎MRIで何か写っても手術するわけじゃなし、手術しても神経症状がなくなるとは限らないし…。神経からきた痛みのようだからgabapentinは効くかもしれないし、リハビリで生活に適応できれば何も問題はない。教科書の記載にもとづいた形而上学的な病態理解も大事だけれど、実際に患者さんを良くするにはという観点を思い出させてくれた意味で、このセッションは静かな衝撃とあらたな学びの喜びを私にもたらした。