来年から精神科に進む(がその前に1年間内科で研修をしなければならない)後輩の先生と、精神疾患の診断分類・診断基準であるDSM-IVと、数年後に更新されるDSM-Vの話になった。このシステムは5つの診断軸で精神科疾患を表現するのが特徴なのだが、最後のaxis 5はGlobal Assessment of Functionと呼ばれ、私には画期的に思えた。
Global Assessmentとは、患者さんがいまどれくらいうまく人生とつきあっているか(あるいはいないか)を100点満点で採点するものだ。90点台は神のような状態で、何事もその人を惑わし悩ませることはなく、幸せに満ち、そのあふれるオーラから人々が悩みの相談にやってくるような時をいう。80点台は、ときどきけんかしたり不安になったりすることはあっても、おおむね元気で充実している時。
それより少し深く不安・悩みに影響されるようになると点数がさがってゆき、50点を切ると仕事が続けられなくなり、より病的になってゆく。10点以下は廃人のような状態で、自分の身の回りの世話が全くできないばかりか、自殺他殺の恐れがすぐにも迫っているような時をいう。入院患者さんで精神科コンサルトをすると、だいたい50点以下のスコアがかえってくることが多い。
まあ適当というか主観的だが、精神状態を定量化するというのは画期的で、痛みを10点満点で評価するのにも似ている。外来診療などで採点を続けていけば、患者さんの状態がよくなっているか悪くなっているか分かりやすいだろう。その精神科に行く後輩とも、その後しばらく会うたび"How are you?"の代わりに"How is your global assessment?"と訊いて、ちょっと元気がない時に低めの点数を付けたりして愉しんだ。
米国内科研修をはじめるまで、米国の医学教育・病院研修で経験したのは内科だけで、他科の(米国での)知識・経験は非常に薄く、米国医師国家試験の勉強で得た以上のものはない。だからこういう基本的なことも、学生時代に米国医学部・病院で全科をローテートした人からすれば当然の知識だが、私は今まで知らなかったということが起こる。今後、徐々に他科の経験も増えていくだろう。