3/23/2010

ICU Book

 名著"ICU Book"(第3版、2007年)を読み始めた。第2版の日本語訳は日本で研修医をしているときに買ったが、数ページ読んだだけで飽きてしまい(あるいは寝てしまい)結局古本屋に売り飛ばした。しかし今、こんなに面白い本にはそうそう出会えないと思うほど引き込まれており、暇さえあれば開いて読んでいる。原著のほうが、著者Marino先生が徹頭徹尾書きおろしているため却って読みやすいのかもしれない。章ごとの連関がみごとで、「(see Chapter 11)」などと言われるままに飛び火して各章を読むことで理解が深まる。
 たとえばFrench、Gaugeという針の太さの単位は何で定義されているかがわかり、はっとする。なぜ中心静脈カテーテル、ましてPICC lineよりも18G針の末梢ラインが緊急時の大量補液に優れているかも、ポアズイユの法則により明快にわかるうえ、グラフや表などでさらに理解が定着する。MAP(mean arterial pressure)を用いるのは、それが動脈の流量、すなわち臓器への潅流を反映している(収縮期圧がたかければ流量が多いわけではない)からとわかり、敗血症ショック時に当たり前にしていた診療の合点がいく。
 すべてのパラグラフ、章がそのような発見や喜び、驚きをもたらし、読んでいて飽きることがない。日本で買った本と同じなのが信じられないくらいだ。おそらく、米国でcritical care medicineをちゃんと経験したからだろう。忙しい2か月のローテーションで無意識あるいは慣習的にしていた診療と、毎日の回診で叩き込まれた知識や原理が、いまここで紡ぎなおされていく、あるいはunderpin(裏打ち)されていく感じだ。6月にsenior residentとしてMICUで再び働くまでに読了し、後輩たちに得たものを教えてあげたい。