腹膜透析は移植までのブリッジとして行われる面もあり、できればどちらも知っておきたい。さまざまな観点からエビデンスをまとめたレビュー(Kidney360 2022 3 779)によれば:
・HD患者に比して移植を受ける割合が高い
・DGFの割合は報告によってさまざまだが、残腎機能がある分(除水効率などのため体液が多い分)PD患者が有利かもしれない。
・拒絶が多いという歴史的な報告があるが、新しい報告では否定的
・グラフト塞栓症のリスクはHDに比して高い報告が過去に出たため、注意が必要。HDではヘパリンが用いられていること、凝固異常のためHDが不適合な患者がPD群に含まれている可能性、フィブリノーゲンなどが血中に多めなことなどが原因に推察されている。ただし、こちらも最近の報告では有意差はないという。
・DGF中のPD!これが一番のトピックで、腹膜炎とリークの合併症が懸念されるが、注意深くやれば大丈夫な報告がでている(米国のはKI Rep 2021 6 1634)。彼らのガイドラインは:
①移植外科医に相談する
②以下がないことを確認する:腹膜の破綻(peritoneal breach)、イレウスによる腹部緊満、腹腔内の病態(感染、出血など)、生命にかかわる高カリウム血症、低酸素血症と肺水腫をともなう体液過剰
③実施の際にはCCPDのみを用い、まず1.5%糖液500mlでテストし、痛みやリークがなければ1L×90分貯留×6サイクルを行い(ただし仰臥位を保つこと)、徐々に貯留量を増やすが移植前貯留量の2/3を越えないこと、リークや排液混濁をチェックし、PD液にはヘパリンを入れないこと
・PDカテーテルの抜去時期にコンセンサスはないが、欧州は早期抜去を推奨。移植と同時(DGFの可能性が低い、生体ドナーの場合など)、6週以内などあるが、遅くとも3ヵ月以内。
・グラフト廃絶後のPDは少数派だが、禁忌ではない。免疫抑制薬は残せば腹膜炎のリスクになるが、残腎機能を保つことにもなるため微妙(ただし、グラフト廃絶後のPD患者の残腎機能の低下は未移植PD患者よりも速い)。
・他臓器移植患者のESKDとPD:未移植PD患者に比して生命予後や感染症のリスクに有意差はない。CNIと被包化腹膜線維症(encapsulating peritoneal fibrosis)のリスクや、ステロイド下の糖尿病リスク(PDは糖液を用いるため)が懸念されるが、安全に行うことができると結論される。