5/27/2025

母の日特集

 先週はEurovision Song Contest(ESC)決勝がバーゼルで行われ、(プロパガンダとしてコンテストに力を入れる)イスラエルの代表Yuval Raphaelを抑えて(クラシックの歌手としても活躍する)オーストリア代表JJが優勝した。サウナのすばらしさを歌うスウェーデン代表KAJや、マキアートへの愛を歌うエストニア代表Tommy Cashも話題になった。また、英語で歌う国が多い中、フランス・スイス・ルクセンブルグはフランス語で歌った(オランダもフランス語と英語のミックスだった)。

 母の日が近かったせいか、普遍的なテーマだからかは分からないが、母が関係する曲が多かった。フランスのLouaneは"Maman"、オランダのClaudeが歌う"C'est la vie"は「母さんが言っていた・・」で始まり、ノルウェイのKyle Alessandroは闘病する母からもらったメッセージを歌にした"Lighter(命を燃やせ、の意味)"、そしてギリシャのKlavdiaは祖国と難民・移民を母と娘に例えた"Asteromata"。

 ヨーロッパと母と言えば、モーツァルトのピアノソナタ8番(K310)。彼の母がパリで突然病に倒れ急死したころに書かれた曲である。珍しく短調(A minor)で始まる第一楽章は、モーツァルトのピアノソナタのなかで最も素晴らしいという人も多いようだが、作曲の経緯を知ると、彼のものすごい動揺と苦しみが込められているようにも感じられる。

Commencement address

 以前にこちらでも話題にしたAbraham Verghese先生が、いま渦中のハーバード大学で卒業式スピーチをすることになった。同大学の卒業行事は来週の火曜から木曜にかけて行われ、スピーチは木曜朝のようだ。医師だけでなく全大学を対象にしたお話に、注目したい。

5/10/2025

Cookie

  Cookieとは、主に女性を形容する際に用いられる表現で、調べると、厳密にはtough cookieとsmart cookieの二種類があるというが、要は「したたかな、しっかりした、手ごわい」といった意味である(尾崎豊の楽曲"Cookie"とは、だいぶん違う)。医療現場では、患者や患者家族で、しっかり相手の説明をしっかり理解し、しっかり質問をし、しっかり主張する人を指す(「食えない人」のような悪い意味ではもちろんない)。


旧朽木村(現高島市)


5/08/2025

Permissive hypertension

 移植直後は高血圧を許容する傾向にあり、降圧薬は中止し、術後(rATGなどで)血圧が低めな時には補液を積極的に行う。DGFの場合も、除水は極力少量で済ませる。ただし、生体腎移植でCITが短い(スワップでない)場合、ドナーの腎臓はドナーの環境(正常血圧)に慣れているので、レシピエントの環境(高血圧)に置かれるとびっくりしてしまうかもしれない。もちろん低血圧は避けるべきだが、レシピエントを高血圧にしておく理由は、あまりない。

5/04/2025

Follow-up of active list

  患者が移植前評価を受けたうえで、リストに載っても、すぐに移植されるわけではない。何か問題があると(感染症、悪性腫瘍、心血管系疾患などによる入院など)、それが解決するまではinactiveとされ、移植はまわってこない。

 献腎移植の待ち時間が年余にわたる以上、リストに載っている患者の管理はとても重要だ。待っている間にリストから外れる患者も多い(高齢、死亡など)。逆に、腎機能が安定ないし改善しているのにリストに載り続けてしまうと、不要な移植がまわってくる可能性もある(手術に呼ばれて、やっぱりキャンセルして・・と、非常にどたばたすることは想像に難くない)。

 Pre-transplantのコーディネーターも、Post-transplantのコーディネーターに劣らず、大変だ。


4/26/2025

PPI/ICI-AIN

  免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象(irAE)に急性間質性腎炎(AIN)があって、そのリスクはプロトンポンプ阻害薬(PPI)服用患者で高いと報告されている。なぜか?

 ICIは自己寛容を誘導するメカニズムを阻害することで自己に反応するT細胞を活性化する。ICI-AINで多く見られるリンパ球はT細胞で、ICIによって活性化したT細胞が腎臓(自己)に集まってきていると想像される。

 ただ、ICIは腎臓に限らず全身にirAEを起こしうるうえ、すべての患者がirAEを発症するわけではない。だから、とくにICI-AINを惹起する、別の要素があると考えられる。その一つが、PPIなのかもしれない。

 PPI、NSAIDs、抗菌薬などAINを起こしやすい薬物には、T細胞による免疫反応を起こすポテンシャルがあると考えられる。より詳しくは、PPIそのものに抗原性があるというよりも、PPIが体内で蛋白質と結合することで抗原性が生まれると考えられている(そのような役目をする物質をハプテンという)。

 PPI/蛋白質抗原は腎臓の中(尿細管や間質)で作られているかもしれないし、腎臓の外で作られて尿細管や間質に達する(糸球体で濾過され、尿細管で再吸収される)のかもしれない。そして、間質の抗原提示細胞(樹状細胞)に提示され、T細胞による免疫反応を惹起するのかもしれない。

 ・・という話を一般腎臓内科フェロー向け病理カンファレンスで聞いた(CKJ 2023 16 1834)。急性間質性腎炎はT細胞による炎症なので、好中球よりも特異性が高く(adaptive immunity)、病態理解が近いのかもしれない。



If a tree falls

  ”If a tree falls in a forest and no one is around to hear it, does it make a sound?とは、認識されないものは存在するのかという問いで、時々耳にする。考えはじめると、こうした例はたくさんある。たとえば、プロトコル腎生検でしかみつからないサブクリニカルな拒絶は、プロトコル生検をしなけば存在しないのと同じことになる。

Miralax

  Miralax®とはポリエチレングリコールの下剤で(miracle + laxativeの造語と思われる)、日本でも最近は大腸内視鏡の準備だけでなく下剤としても処方できるようになった(モビコール®、move + colonの造語と思われる)。

 名前の通りエチレングリコールの重合体であり、重合しているのでエチレングリコールのようにシュウ酸尿症・腎症を起こすことはない・・と思い込んでいたら、稀ながら報告されている(KI Report 2024 9 S618)。製造の過程で混入すると推察されている(あくまでも推察である)。

 安全な薬の認識して移植後患者の便秘によく推奨していたが、シュウ酸尿症や腎症が心配される例には、使用してはいけないとまでは言わないが注意が必要だ。

Missed dialysis

 献腎移植の知らせは突然やってくる(リストに載り始めたら、そろそろと知らせることもあるが・・しかし最近はOOSがあるので飛び越されてしまうかもしれない)。なので、それだけ予期せぬ要素が多い。

 多いのは、透析のタイミングだ。月水金クールの患者で月曜日に移植するとなると、入院後に少しでも透析してから移植に臨むよう試みる。

 では、月水金クールの患者が木曜日に移植する場合は安全かというと、必ずしもそうとは言えない。患者が(どういうわけか)透析をスキップしていることもあるからだ。米国では珍しい事ではない。

 入院時に知らされて、血液検査でカリウムが著しく高値・・なんてこともある。もちろん緊急透析後に移植となる(移植後もカリウムだけのために透析を要することもある)。

 患者にliving donor onlyのオプションを提示する理由は、このようなさまざまな予測不能(管理不能)因子を減らすためでもある。


P2Y12

 抗血小板薬、とくにクロピドグレル・プラスグレル・チカグレロル・チクロピジンを中止したあと、まだ効果が残っているかを調べる血液検査があり、Platelet P2Y12 Inhibition Test(VerifyNow®)という。

 PRU(P2Y12 reaction units)が194以下で薬がまだ効いており、それ以上で薬はもう効いていないのだという。自施設では消化器内科が頻繁に用いるそうだが、比較的緊急の腎生検で患者がいつ抗血小板薬を中止したか定かでないようなときには参考になるかもしれない。

 腎生検の出血リスクを決める因子は結局どこをどう射すか、と言ってしまえば元も子もないが。とくに、皮質が菲薄した腎臓は穿刺針がすぐに髄質に達してしまうので注意が必要だ(そもそも必要なのかをよく考えた方がいい)。