6/13/2025

Guardian Angels

 一部の患者さんには、移植された腎臓に名前を付ける習慣がある。上司の一人は「移植された腎臓は赤ちゃんのようなものです、最初は手がかかりますが、だんだん手がかからなくなります、一緒に守って行きましょう」と術後の患者さんに説明する。

 どんな名前を付けるかは、もちろん患者さんの裁量である(一部の患者さんなので、付けない人もいる)が、時には「私と同じように移植を受けたがのちに亡くなった友達の名前」「この腎臓を移植される前に亡くなった親の名前」といった答えを聞くこともある。

 献腎移植を待つ人にとって、腎臓を受けることは奇跡のように感じられてもおかしくない(もしかしたら、天国から見守ってくれている誰かの助けがあったのかもしれない・・というように)。あるいは、この腎臓を守ってくれますように、という思いを込めてのことかもしれない。

Haiku

  「電子カルテといえばパソコン」と思っていたが、スマホアプリが登場して10年以上、パソコンにできてスマホにできないことはどんどん減っている。電子カルテ最大手Epicのスマホアプリ、Haiku。いつでもどこでもすぐさま結果を照会できるほか、オーダもできる。Epic chatもあるので、ちょっとした質問や確認がすぐにできる。カルテも、ディクテーション機能を使えば書ける。リモート診察(video visit)も、スマホのカメラとマイクをつかってできる。




GIB in SPK

 膵腎同時移植患者であっても、消化管出血の原因はほかの患者と同様に胃潰瘍・毛細血管拡張・憩室などかもしれないのだが、嫌なのは、グラフトからの出血である。

 といっても、膵臓そのものから出血するわけではなく、膵臓と共に移植されたドナー由来の十二指腸、またはそれがレシピエントの腸管と吻合しているところから出血しうる。内視鏡がとどきにくい部分なので、double-ballon enteroscopyが必要になる。

 膵移植が膀胱との吻合から腸管の吻合に変わって、利点もいろいろ多い(いまでは膀胱と吻合するところはほぼないと思われる)が、消化管出血で上部・下部内視鏡が正常の場合には、注意が必要だ。





Team Building

 NBAファイナルでインディアナ・ペーサーズがチームとしてよく戦っていると礼賛されている。 スーパースターといえる選手はいないかもしれないが、選手層が厚く、みんなで隙を作らずに執念深くタフに戦うチーム作りが何年もしてきて、それがついに実を結びつつあるという。Tanking(敢えて最下位になってドラフトの指名権を獲得すること)を行っていないことも評価されている。

 インディアナ・ペーサーズには1990-2000年代にReggie Millerというスーパースターがいた(写真、右)。現在のように誰もが高い3ポイント成功率を持っていなかった時代に、正確に3ポイントシュートを決める選手で、瞬く間に試合をひっくり返すカリスマを持った選手だった。

 (少し話はそれるが、彼の姉CherylもWNBAリーグが人気を集める前の名選手で、引退後はNBAの解説者として活躍し、のちに彼と同様に殿堂入りしている。先見の明がある姉と弟といえるかもしれない。WNBAリーグといえば、スーパースターのCaitlin Clarkは奇しくもインディアナ・フィーバーに所属している。)

 ただ、1度だけ進出したファイナル(2000年)では、シャキール・オニールやコービー・ブライアントといったスーパースター達を擁するロサンゼルス・レイカーズに2勝4敗で敗れている。今年の相手はSGA選手などを擁し常勝に近いシーズン成績(68勝14敗)の強豪オクラホマ・シティ・サンダー(前身はシアトル・スーパーソニックス)だが、どうなるか。

 ・・もさることながら、バスケットボールに限らず、強いチームを作るには、才能に秀でたメンバーが一人いるだけではどうにもならず、層の厚さと抜け目なさと執念が必要なんだなあ、という参考になった。


2025年6月12日付New York Timesより


I don't know

 I don't knowという間投的に用いられる表現がある。知らないわけではなく、自分の考え(こうしたほうがよい)があるのだが、相手がそう思っているかはわからない(というかどうやらそうは思っていないらしい)ので、それに配慮して挿入される。Iが一番つよいイントネーションである。

6/10/2025

Another Azole

  タクロリムスやシクロスポリンの濃度を上昇させるCYP3A4阻害薬の代表はazole系抗真菌薬である。しかし、同様にazoleと名の付くmetronidazoleは、CYP3A4阻害薬ではないと考えられている(Ann Pharmacother 2007 41 653)。2-methylimidazoleから合成されるためMetronidazoleは呼ばれるようだが、すべてのazoleがCYP3A4を阻害するとは限らないのかもしれない。

回診チームの性比

  毎朝の回診チームにいる人数をざっくり数えると、腎移植外科スタッフ1人、同フェロー1人、同レジデント(外科系のローテーター)1人、同診療看護師2人、腎移植内科スタッフ1人、腎移植内科フェロー2人、移植専門薬剤師1人、ソーシャル・ワーカー1人、エデュケーター1人、栄養師1人の12人。そのうち、女性が10-11人(男性が1-2人)ということが、そんなに珍しくない。もちろん日本でも起こりうることだが。

TPE and CVID

  腎移植で(とくに、拒絶などに対する治療で)免疫抑制をつかうたびに、そんなに使って大丈夫?と心配になってしまう。もちろん、何のリスクもないわけはない。黎明期に怖れられたCMV感染は予防薬によってコントロール可能になったが、たとえばrATGは積算量がたまるとのちのち悪性腫瘍などを起こす。

 ただし、life-prolongingではなくlife-savingな臓器移植の場合、拒絶と悪性腫瘍のどちらを取りますか?とは言えない面もある。以前カンファレンスで肺移植患者でもあるICU医がパネルディスカッションでその質問を(life-prolongingな臓器である腎移植内科医から)されて、やっぱり拒絶のほうが嫌だと答えていたのが印象に残っている。

 「のちのち」の逆に、すぐに困る副作用もあって、たとえば血漿交換をおこなうと免疫グロブリンが(当たり前だが)減る。そのため、もともと免疫グロブリンが少なく皮下注IgG製剤などで補充しているCVID患者などでは、免疫グロブリンがとても低くなってしまう。そのため、FSGS再発例など長期的に多い回数交換を要する場合には、免疫・アレルギー科医と相談しなければならない。

 

IVIG for ABMR

 ABMRの治療、なかでも血漿交換は負担が大きいので、DSAがなければやらない(除く抗体がない、という話になる)。しかし、DSAがあまりに高MFIだと「何をやっても減らせない」という話になり、エクリズマブで抗体(古典経路)による補体活性化を止めようとすることもある。

 逆に負担が少ない治療の代表がIVIGであるが、効いているのか効いていないのかわからない(が、何かしないよりはよい)印象で妥協的に用いられることが多い。しかし最近、塵も積もれば・・ではないがIVIGを根気よく毎月1g/kg×6おこなうと、行わないよりもソフト・エンドポイント(eGFR低下率、ABMRに関わる遺伝子発現パターン)に有意差がみられた(ahead of print、Kidney Int 2025 S0085-2538(25)00406-5)。

 こちらは、異種移植や抗ネフリン抗体の研究で今を時めく(そして今何かと焦点になっているハーバード大学の)Dr. RiellaがX(だかFacebookだか)に紹介していたのを見た先生から聞いた。


FAT1

 マス・スペクトロスコピーによって膜性腎症の標的抗原を同定できるようになったとはいえ、まだまだ標的抗原が分かっていないケースは多い。移植後のde novo 膜性腎症はその一つであるが、昨年一つ抗原が見つかった。もちろんMayo Clinicのグループが報告した。AMRを合併した7例中4例にカドヘリン・スーパーファミリーの1つであるFAT1に対する抗体が見られた(Kidney Int 2024 106 985)。