1/28/2008

思考過程

 うまくいかないとき、自分の考えではうまくいくはずなのにおかしい時には、正しいと思っていることを疑わなければならない。肺炎で治療中の患者さんが、経過中にふたたび発熱した。肺炎の原因菌はわかっており、それに効くであろう抗生剤を最初から使っていた。いったん良くなったのに、ふたたび悪くなった。
 尿路の感染(導尿の管から菌がはいる)、血液の感染(点滴の管から)、副鼻腔の感染(鼻から胃にいれた管から)、皮膚の感染(褥創があれば)など疑わしいものはしらべたが、原因として否定的である。肺炎が悪くなった可能性がやはり疑わしい。
 人工呼吸器で管理しているので、口から気管に管がはいっている。そういう患者さんは、緑膿菌など院内の悪い(抗生剤に耐性のつよい)菌が入りやすい。しかし痰をしらべると膿性であるが、染色して顕微鏡でみても菌はいない。どういうことなのか。
 気まぐれの熱ならよいと思っていたが、どうにも解熱してくれない。感染症科の先生に相談すると、抗生剤の量が少ないことがわかった。抗生剤、じつは痰の培養結果がでたのでよりカバーの狭い(どんな菌にも効くわけではないが、その菌にはちゃんと効く)ものに変更したのだが、量が少なかった。
 成書を確認し、チームの医師複数で納得のうえオーダーした。腎臓がわるいので腎臓病の人のための用量を書いた本を参照したのだが、そもそも普通の人の量として書かれた用量じたいが少なかった。腎臓にはよいが、感染症にはよくなかったということだ。感染症も腎臓もわからなければ、患者さんはなおせない。