10/20/2009

Language Line

 今日は外来診療、患者さんは英語が話せない人だった。付添いの人も通訳の人もいない。部屋にはLanguage Lineという受話器が二つ付いた電話がある。電話の向こうには通訳がいて、受話器の一方を私が持ち、他方を患者さんが持つ。私が電話越しに英語で質問すると、通訳が患者さんに訳して伝え、患者さんが通訳に返答したのを今度は私に英語で教えてくれるという仕組みだ。
 手間がかかるので同僚たちには忌み嫌われているこのシステムだが、診療の助けになった。時間に余裕もあったし、患者さんも初めての受診ではなかったので、今回の受診理由について主に問診したので済んだので焦りがなかったせいもある。最も困ったのは(喘息等に使う)吸入器の使い方を説明する時だったが、受話器を片手にどうにか口から大きく息をしてエアロゾル成分を肺に吸い込むことは伝わった。
 Language Lineは便利だが、診察が終わった後には使えない。患者さんがどうやって検査を受けに病院のある部署まで歩いていくのか、どうやって薬をもらいに処方箋を薬屋に持っていくのか、不安を抱いた。受付の秘書さんもLanguage Lineを使えるらしいから、地図などを見せて十分に説明してくれたことを祈る。そうしてみると、付添いの通訳さんがいてくれたほうがずっと助かるのだが。
 移民してくる患者さんは、こちらに来る前に十分な医療を受けられなかったせいもあり、既往歴として確立した診断名がない。だから、患者さんの症状から自分で診断しなければならない。でも、本来医師の診察はそうでなければならないし、他医で診断がついた患者さんでも自分で確かめるまでは疑ってかかるくらいでなければならない。