今週は、1月にteachingのattendingとしても一緒に働いた内分泌先生と一緒だ。この先生はボストンの病院でトレーニングを受けただけあって、最新エビデンスに精通しているのみならず、「最近のCleveland clinicはこう言っている」「Mayoはこう言っている」と全国トップレベルの診療を知っている先生なので話が面白い。
GLP-1アナログ(Byetta®のクラス)は何種類もの新薬がFDA治験最終段階まできており、新しいものは週1回あるいは月1回の使用でよいという。GLP-1の膵島β細胞への作用はグルコースに依存しているため低血糖を起こしにくいとされている。
GLP-1は胃蠕動を低下させたり食欲中枢に作用して食後の満腹を早くもたらしたりするが、他にも糖尿病患者に見られる食後のparadoxical Glucagon secretionを改善する。この現象は、糖尿病患者がインスリン欠乏(膵島β細胞の喪失)のため食後のグルカゴン分泌を抑制できないためと考えられている。
SU剤については、このクラスの多くの薬剤が血管上にあるK-ATP channelにも作用するため虚血時の血管拡張を阻害することが知られている。とくにGliburideはそれが顕著であるため、もはや使われることはほとんどない。その点ではGlimepiride(Amaryl®)が、比較的安心して使える。
食後高血糖を抑えるにはNovolog®(超速効インスリン)、Prandin®、SUが用いられるけれど目標血糖は食事後2時間で140mg/dl以下とされている。ちなみに非糖尿病者での食後血糖は、一旦食前血糖より高くなり、そのあとインスリンがovershootするため食前血糖より低くなる。このとき、交感神経が敏感な人(不安な人、やせた人など)では汗や震えなどの低血糖症状が出ることがある。これは生理的な反応で必要に応じた対症療法を行う。
Prandin®のクラス(Non-SU insulin secretogogue)にはもう一種類あるが、Prandin®のほうがpotentでかつ用量に幅がある(0.5mgから4mg)ので好まれている。SUに関しては、50%ルールというのがある。これは「FDAが定めた最高用量の50%で90%の血糖降下作用がある」というもので、逆にいうとこの用量から増やしてもあまり効果増は期待できない。
Actosと同クラスのAvandia®は、心血管系副作用の件で、いままさにFDAによる調査を受けており、今週末にも市場から外される見込み。いま教わっている先生が治験データなどを読み込んだところによれば、この薬はFDAがいうほど心血管系の副作用は大きくないそうだが。
[2019年追記]上述のPrandin®は一般名レパグリニド、日本の商品名はシュアポスト。このクラスは他にミチグリニド(日本の商品名はグルファスト)、ナテグリニド(ファステック、スターシス)がある。