Cushing症候群、Cushing病について学ぶ。Cushing病と単純な肥満を見分けることは難しく、Cushingに特徴的なサインを覚えてpretest probabilityの精度を上げる必要がある。とくに重要なのはアザができやすいか、紫色で幅広い(1cm以上)striaeがあるかどうか、そしてflushingがあるかどうか。また、Cushing病・Cushing症候群は進行が緩慢(数年単位)で患者さん本人も近親者も久々に会う人に指摘されるまで体型の変化やmoon faceに気づかないことがあるという。それに対して異所性ACTH産生腫瘍は進行がとても速いことがあり(数週間)、多くの場合carcinoidあるいは肺癌によるという。
スクリーニング試験に適しているのは1mg(経口)dexamethasone抑制試験で、前日23時にdexを内服し翌朝8時に血中cortisolレベルを測定する。早朝に来るのが大変な人は、24時間蓄尿してurine free cortisol(UFC)を測定する。前者のほうが感度は良いが、偽陽性があるので注意が必要だ。偽陽性は、肥満やうつ病でみられる。これらはACTHがやや多く分泌されていることが原因。それで、偽陽性を否定するにはCRH刺激試験を行う。これは0.5mg dexamethasoneを6時間おき2日間(厳格に6、12、18、24時)内服して副腎も下垂体も黙らせたあとで、それでも下垂体がCRHに反応するかをみる。朝6時に8錠目のdexを内服してから朝8時にCRHを静注し、15、30、60分後にcortisol レベルを測定する。肥満やうつ病であれば、下垂体が黙るのでcortisolレベルは低い。
Cortisol産生過剰が示された後は、どこが異常かを調べる。まずACTHレベルを測定し、副腎腺腫ならばACTHは低値、それ以外ならばACTHは高値と鑑別する。副腎腺腫の治療は、患側の副腎摘出である。摘出後は対側の副腎がまだ寝ておりホルモン補充が必要だが、やがて目覚めるのでその必要がなくなる。Hydrocortisone(半減期8時間)を午前8時に20mg、午後1時に10mgというふうに内服していれば、夜間にはhydrocortisone freeになり副腎抑制が掛からない。次に下垂体ACTH腫瘍と異所性ACTH腫瘍を鑑別するために8mg dexamethasone抑制試験を行う。下垂体腫瘍はこの高用量ステロイドに負ける(投与翌朝8時の血中cortisol濃度は投与日朝8時のレベルに比べて90%以上も低くなる)のに対し、異所性ACTH腫瘍はタチが悪く、これだけやっても投与後cortisolレベルは投与前に比して40%未満しか下がらない。
それでも判断がつかなければ、IPSS(inferior petrosal sinus sampling)を行う。これは放射線科が大腿静脈から内頚静脈を通して左右のinferior petrosal sinus(下垂体のすぐそば)にカテーテルを挿入し、さらに末梢ラインも挿入して、それら三か所から血液サンプルを同時に採取してACTH濃度を測定する。ACTHが下垂体由来であれば、下垂体からの血液のほうが末梢のそれよりACTHは高くなる(比で2:1以上)。CRHを注射して反応をみた場合も同様(比は3:1以上になる)。左右どちらの下垂体由来かも診断できる。ACTH産生腫瘍はしばしば小さく(5mm以下)MRIにも映らないことが多いので、この試験は治療上も有用である。下垂体ACTH腫瘍の治療は外科摘出、それでも上手くいかなければ副腎摘出に踏み切ることもある。異所性ACTH腫瘍の治療は由来を確かめるところから(胸部CT、somatostatin scan、気管支鏡、EGD、etc)。