内分泌月間がはじまった。最初に受け持った患者さんは低血糖で、16年前にRoux-en-Y gastric bypassを受けた人だった。低血糖とgastric bypassでUp To Dateを検索したら、nesidioblastosisなる疾患があって、これは膵島細胞症ともよばれ、gastric bypass後におこる消化管ホルモンの異常(高GLP-1血症)で膵島細胞が過形成をおこし、高インスリン血症による低血糖がおこる。この患者さんでは血中インスリン濃度が低く、どうやらカロリー摂取不足のほうが可能性としては高いが、勉強になった。
高インスリン血症は、必ずしもインスリノーマだけにみられるわけでなく、インスリン抵抗性の症例でも見られる。大事なことは、インスリン濃度は血糖とともに測定しなければならない。低血糖時にはインスリン分泌は抑制されているはずなのに、それでもインスリンが過剰分泌されていれば、インスリノーマやnesidioblastosisを疑う。
血糖は正常なのにインスリン濃度が高いときには、脂肪酸や炎症サイトカインによりインスリンによる血液中から細胞へのブドウ糖の取り込みが抑制され、それを補う形で血中インスリン濃度が上がっている可能性もある(高インスリン血症はインスリン受容体のdown-regulateをおこし、悪循環になる)。
インスリン抵抗性を測定する方法に、hyperinsulinemic euglycemic clampという試験があって、これはインスリンを一定量上静脈から流しながらその作用に拮抗して正常血糖を維持するためにどれだけブドウ糖が必要かを測定することで、患者さんがどれだけインスリンに敏感(あるいは抵抗性がある)かを調べるもの。しかし、今月一緒に働く先生によれば、こんなことしなくても、metabolic syndromeかどうかで分かるという。
なお、PCOS(polycystic ovary syndrome)はインスリン抵抗性を合併しているが、先生によればこれはPCOSの結果なのではなく、むしろインスリン抵抗性による高インスリン血症のために卵巣内のthecal cellsが過形成・肥大を起こし、さらにテストステロンを分泌するため無月経や多毛が起こるのだという。だから治療はmetforminである。