以前に人工知能にもロボットにもないのは愛と思いやりを与える心だと書いたのに、ちがうらしい。愛犬AIBOちゃんがでた1999年から17年、いまや人型のペッパーくんが病院で「カウンセリング」をしてくれる時代みたいだ。こういう話になると、どうしようかなと心配になってしまう。
そんなペッパーくんの目を見ていると、しばらく考えてから感情を診断してくれ、悲しいなら「一緒に泣きましょう、そして新しい日を迎えましょう、あなたの笑顔が一番素敵です」みたいなことをジェスチャーと表情巧みに言ってくれる。けっこう一生懸命だし、おそらくプロの心理士さん(はやければ2018年から公認心理「師」という国家資格になる)が監修しているので、意外と効く。
これからロボットがもっと進化して、よりリアルに患者さんと一緒に笑い、喜び、悲しみ、泣いて、励まし、支えてくれるかもしれない。AndroidにもiPhoneにも「カウンセリングアプリ」がすでにある。グーグルが開発した瞑想アプリHeadspaceもだ。疲労する感情労働者とちがって、ロボットは怒りや悲しみを受け止めても燃え尽きない。
汽車ができて馬車がへり、冷蔵庫ができて氷屋がへり、スーパーができて商店街がへり、今度は人工知能とロボットができてどうなるの?というのが、わが国でもよく聞かれるようになった「第4次産業革命」。ただこれは、「それでも私達にしかできないことはなに?」とより考える機会になるだけである。
第1次産業革命にしたって、アメリカの西部を中心に流通や金融を行っていたヘンリー・ウェルズとウィリアム・G・ファーゴによるウェルズ・ファーゴ社は、馬車(図はおもちゃ箱)がなくなっても事業を拡大して、2015年には世界最大の資本を有する銀行になった(いろいろあって今月JPモルガン・チェイスに抜かれたが)。
ひるがえって医療と第4次産業革命との関係では、「人間はAIに負ける、ロボットに負ける」とか勝ち負けに持っていかないことだと思う。不戦勝みたいで申し訳ないが、それしかない。自分の頭と心と手をきたえてこれらを利用すればいいのだし、なにより人と人との「あいだ」を充実させる、すなわち徳をきたえることだと思う。