9/12/2016

Pascal

 研修医のときに出会った先生はいろんなことを教えてくれたと以前に書いたが、そのひとつに「カルテやサマリーで数字を使う時には単位を書くように」というのがある。症例発表の形式にしておきなさい、ということだった。そのときには正直面倒くさいなと思ったが、慣れればそんなに苦ではない。
 ちゃんと明記したほうがいいこともある。たとえばカルシウムはmEq/lだったりmmol/lだったりmg/dlだったりする。そして、腎臓内科医ならこれらの互換性を知っておく必要がある(私はこれを有名な先生がさりげなく回診で開陳しているのを耳学問した)。4mEq/lのCaは2で割って2mmol/l(2価イオンなので)。2mmol/lのCaは原子量の40(g/mol)を掛けて80mg/l、分母をリットルからデシリットルになおして8mg/dlになる。
 そうやって単位に注目していると、ときどきすごいのに出会う。経管栄養剤の粘度を表す単位は「パスカル」で、正確には「ミリパスカル・秒」。圧のSI単位がパスカル(ニュートン/m2)になってポアズから変わったらしい。この単位の成り立ちには極めて高度な物理学が必要らしいが、私はケチャップ(写真)が3000-8000ミリパスカル・秒という目安を知っていればいいかとおもう。