9/01/2016

Today's Hero

 午前の外来受付が終了し、午後の外来受付まで待っている患者さんが待合ベンチで苦しそうにしていたとき、午後診察の医師に電話して「患者さんがつらそうなので、もし可能なら早めに診ることはできませんか?」と聞くことに罪はない。「とりあえずそちらに行きます」と言ってくれるかもしれないし、忙しかったり都合が悪かったりすれば「他のA先生に対応してもらいましょう」「救急外来にお連れしましょう」と言うかもしれない。

 (それくらい待てるでしょ)と言われればそうなのかもしれない。(休み時間なんですけど)(まず看護師さんに連絡してくれないと指示系統が乱れます)というのも、組織で決まった時間に働く人間だからそういう理屈もあると思う。でも、そういう誹りを覚悟して、それでも患者さんのためにと行動できる勇気を持った人には名前というか称号がついていて、それをヒーローという。

 ヒーローといえばマライア・キャリーとMr. Children。前者は自分らしくあることを怖れない勇気を持った一人称のヒーロー。後者は愛する人のために命を賭けられる二人称のヒーロー。そして上に挙げたのは愛する隣人のために一歩を踏み出せる、いわば2.5人称のヒーロー。よきサマリア人とも言う。米国にたくさんあるGood Samaritan Hospitalというのはこの精神でできた病院ということになっている。

 よく知られているだろうがサマリア人というのはユダヤ人の仇敵にあたる。でも旅の途中で傷ついたユダヤ人が倒れていてお坊さんも誰もこの人を無視した(かどうか知らないがとにかく通り過ぎた)のに、サマリア人だけが声をかけ手当てをし、傷ついた人をロバに乗せ宿に連れて行き財布を渡して「あとをよろしく頼む、足りないお金はまた払う」といって去っていった(Luke 10:25、図)。この人も私にとってはヒーローだ。