今いる街にある移植5施設が一緒に話し合う腎病理カンファレンス(もちろんZoom)があって、鑑別診断を挙げる役目を仰せつかった。APOL1とCMVとTMAとFSGSがつながらない・・と、きれいな発言はできなかったが、そのぶん、(振り返れば明らかな)collapsing glomerulopathyの概念を忘れないよい機会になった。
最近のレビュー(Curr Opin Nephrol Hypertens 2023 32 213)によれば、HIVAN・パミドロネート・SLEなどとの関連もさることながら、一番大きな関連はAPOL1だという。
APOL1はインターフェロンによって誘導される。ウイルス感染(HIVだけでなく、B19、CMV、HTLV、そしてCOVID-19など)や自己免疫疾患などのセカンド・ヒットを受けると、・・さまざまな機序で足細胞を傷害する。APOL1はpore-forming proteinなので、細胞膜やミトコンドリア膜に孔をあけるのではと考えられている。また、足細胞だけでなく内皮細胞も傷害すると考えられる(そもそもAPOL1は内皮細胞から単離された)。
NON-APOL1-associated glomerulopathyは、内皮細胞傷害が主因と考えられる。たとえば抗VEGFA抗体(bevacizumab)、TMA、移植腎における血管傷害など。HIF1・HIF2などの関与が推察され、APOL1の有無にかかわらず発症する。他にはコエンザイムQ10生合成に関わる遺伝子異常(COQ2、COQ6、COQ8B)など。
パミドロネートはミトコンドリア傷害が機序と言われているが、足細胞は通常時には解糖系をエネルギー源にしているので、それが本当の機序なのかははっきりしない。
臨床的にはここまでだが、反応して増殖する上皮細胞の起源についての研究や、腎生検標本から遺伝子発現パターンを調べる研究などが進められているという。