移植免疫では抗原提示、感作、免疫活性化、拒絶・・をいかに抑えるかの話が中心になるが、免疫にはそもそも寛容の仕組みが備わっている(Trends in Immunology 2022 43 8)。CD4+/CD25+/FOXP3+のレギュラトリーT細胞(Treg)のほかにも、間葉系幹細胞、寛容原性(tolerogenic)樹状細胞、レギュラトリーマクロファージ(Mreg)、骨髄由来免疫抑制細胞、レギュラトリーB細胞(Breg)など。
これらの細胞をドナー特異的に育ててレシピエントに注入すれば、免疫抑制薬なしに移植免疫だけが寛容されるのでは?と誰もが考える。じつは治験も行われていて、有名なのはONEスタディだ。ポリクローナルなTregを注入し免疫抑制薬を減らせないか調べた。また、HLA-A2を認識させたCAR-Treg細胞をHLA-A2ドナー腎を移植されたレシピエントに注入するfirst-in-human phase 1 studyも計画されている(NCT04817774)。
どうやってTregを採取し育てるか、どれくらいの量でどんなふうに注入するか、どんな免疫抑制薬と組み合わせるか、注入した細胞はどれくらい長生きするのか・・など分からないことがたくさんある。今のところは拒絶リスクの低い例にしか試されていない。移植特異的でなければ、腫瘍や感染に対する免疫も抑制されるだろう。
でも、期待がかかる。移植学会などでもホットトピックと思われ、日頃の診療の合間にも機会を見つけて勉強していきたい。