8/03/2007

気管切開

 意識のない患者さんがいる。自分で呼吸することはできるが、舌根が落ち込んでのどをふさいでしまうので、ほうっておくと呼吸したくても空気の通り道、気道が確保できない。唾液を飲めなくなり、それがのどにたまってごろごろ音を立てる。ほうっておくと、これものどをふさぐし、気管に流れ込む(誤嚥)かもしれない。
 救命で最も大事なことにABCというのがあって、Aはairway、Bはbreathing、Cはcirculation。空気が気道にはいり、酸素が呼吸で取り込まれ、血流を循環していくというわけである。気道の確保はABCのなかでもとりわけ重要である。
 意識がない患者さん、とくに、意識がもう戻らないであろう患者さんについて、気道をたもちつづけるためにはどうしたらよいか。舌根が落ち込むことも、唾液を飲めないことも、根本的に変えることは難しい。窒息の危険を感じながら、そのままにしておくわけにもいかない。
 一つの、そして多くの場合にとられる方法は、気管切開術。のどから気管に向かって切開を入れて、のどぼとけの下あたりから気管にチューブを通す。そして、カフという風船状のものを気管の中で膨らませて気管に唾液が落ち込むのをふせぐ。
 気管切開術をおこなうかどうかを、家族に説明するが、微妙な問題を含んでいる。延命治療の問題。