3.退院の報告
退院の報告は入院中のケアと外来でのケアを結ぶ役割を果たすのでとても重要だ。だから書かないとかは論外だし、患者さんが退院後に外来医を受診するまでに届ける必要がある。といっても、基本的には退院サマリーと同じであるから、サマリーが退院までに書けていれば造作はない。しかしサマリーがタマリーな先生方もおられるだろうから、一から書くつもりで文例を作ってみよう。
(文例)
[外来医]先生 ご机下
お世話になっております。[患者名]様は[入院日]に[主訴]を主訴に当院を受診され、[主病名]のため入院し、[退院日、または本日]に退院となりましたので、入院中の経過をご報告し、今後の方針についてお伝えしにお手紙を差し上げる次第です。(補足:入院が長かった場合には「入院が長引きましたのにご報告が遅くなりまして申しわけございません」を追加)
入院時に[病歴]、[身体所見]、[検査所見]を認め[主病名]と診断しました。[治療]を[日数]行い、[経過:①軽快、②後遺症、③合併症、など]となりました。退院時の[疾患のパラメター]はXでした。今後は[予防策]するように患者様にお伝えすると共に、[日数]以内に貴院を受診するよう指示しております。その際には[注意点]にご注意いただき、もし[再発など]ございましたら当院に再びご紹介くだされば幸いです。
また入院時[副病名①]を認め、[重症度(数値など)→治療→経過→今後;前段落と同じ要領で]としております。
(以下副病名②、③…)
なお、貴院でご加療中の[既往症A、B、C…]につきましては、①貴院での処方を継続いたしました、②[事情]のため[治療の変更]を行いました。これらにつきましては、貴院受診時に再び評価を行っていただければ幸いです。
以上が経過です。ご不明な点やご質問がございましたら遠慮なくおっしゃってください。それでは、このたびは先生の患者様のケアに関わらせてくださりありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
読む側に立って考えれば、冗長なくだりは不要で、簡潔に要点をまとめることが重要だとわかるかと思う。また、ここでも診察の流れの通りに書けばよいのと、日頃のカルテと同じように「診断→治療→経過→今後」の順でひとつひとつのプロブレムに対して記載すればよいのがポイントだ。
そして、やはり重要なことは、読み手の外来医に今後何をどうして欲しいのかを明確に示すことだ。そうしないと、たとえば入院中に理由があって変更した薬剤が自動的に元の用量に戻されて副作用が起こる、などのトラブルの元になる。
4.転院の依頼
自宅退院できる患者様もいれば、できない患者様もいる。高齢化社会が進むにつれ、家で看きれなくなって入院となり、治療が終った後も転院先の施設を探さなければならないケースはどんどん増えてくるだろう。そこで地域連携室のMSWさん達が助けてくださるわけだが、彼ら彼女らも先生方が書くお手紙なしには動けない。だから、お手紙を書いてからMSWさんを呼ぶくらいの姿勢が必要だ。
この場合のお手紙には、現時点での病状と予後、それに必要となる治療のレベル(酸素、吸引、気管切開チューブ、食事形態、経鼻胃管、胃ろう、リハビリ、褥創ケア、尿道カテーテル、間欠的導尿、緩下剤、浣腸、薬物的または非薬物的抑制、インスリン注射など)を分かる範囲で書くことが求められる。それがないと潜在的な受け入れ先も受け入れるかどうか判断のしようがない(なお、米国ではこの場面でお手紙が必要ない;MSWさんがカルテをすべてFAXしてしまうからだ。ただ手紙がないので、受けた側に何百ページのカルテが積まれる…)。
基本的に前章と構成は同じだが、書き出しと書き終わりが違うのでそこを意識して一例を示してみよう。
(文例)
[受け入れ医]先生 ご机下
お世話になっております。このたびは[患者名]様の転院についてご検討いただきたく、現時点での病状と今後についてお手紙でお伝えする次第です。[患者名]様は[入院日]に[主訴]を主訴に当院を受診され、[主病名]のため同日入院となりました。
[主病名]につきましては、[治療]によって[経過:①軽快し、②ある程度は改善したもののXなどの後遺症が残り、③合併症をきたしその治療を要し]、[内服、リハビリ、その他の介助]が[少なくともおよその期間]必要な状態です。
(以下副病名①、②、③…)
(高齢者であれば別にADLについて記載するのが望ましい;食形態はA、移動はB、排泄はC、シャワーはD、など)
以上が現状で、今後の治療について貴院でお願いできないか伺いたくお手紙を差し上げております。お忙しいところお手間を取らせて大変恐縮ですが、なにとぞご高配くだされば幸いです。ご不明な点やご質問がございましたら遠慮なくおっしゃってください。それではご検討の程よろしくお願いいたします。
このお手紙は何と言ってもお願いなので、できるだけ丁寧で分かりやすい必要がある。「お忙しいところ恐れ入りますが」とか「なにとぞご高配のほど」とかは、こういう時のためにあるような言葉だ。先生方も、日常生活でも何かものをお願いする時には取り入れてみてはどうだろうか(どうなるかについて私は責任を取らないが)。