ガイドラインに従った医療を別名cookbook medicineという。ガイドラインは大事だし(エビデンスがあれば)エビデンスに則っているので守られるべきだ。標準化された診療で医療の質が上がるのも確かで、それを否定するものではない。
しかし同時に、患者さんは一人ひとり違う。だからたとえガイドラインに従った診療を行ったとしても、個々の患者さんの半生、文化的背景や生活習慣、病気についての悩みや考え方、家族状況などを考慮しなければ、医師としてのやりがいを感じられなくなってしまうのではないかと思う。
とくにホスピタリストは患者さんのことをまったく知らない状態で診療するので、これを意識しなければ医療がベルトコンベアのような作業になってしまうので注意が必要だと思う。
患者さんは一日24時間病院にいるのに、いったいどれだけのあいだ患者さんと接しているか、ベッドサイドに椅子を持ってきて座り(あるいはベッドに座り)話をしたことが何回あるか、患者さんも自分と同じように幸せになりたくて、それでここにいるのだと考えたことがあるか…、と自問してしまう。