7/18/2015

White Flag(aka 忘れられない一言 33)

 読めていなかった3月の米国内科学会誌を手に取り、on being a doctorを読んで感銘を受けた(Ann Intern Med 2015 162 453)。例によって投稿したのはレジデントだ。いかにレジデントがこの時期に医のアートを学ぶかがわかる。96歳になるひ弱な自分の祖母が体調不良で病院に運ばれて、ERのドクターがcode statusを取らず、リンパ腫の再発とわかると腫瘍内科医は「50%の可能性でcureが可能」といい(こういうことは得てしてある…どうしてかわからないが)、入院中に転倒して硬膜外血腫ができると脳外科医は「手術しましょう」といい、primary serviceの内科医も治療のゴールと緩和ケアについて一言も触れない。まさにelephant in the room(認識しているがあえて触れないタブーのようなもの)だ。いや、認識していないのかもしれない。

 このレジデントはICUで果てまで治療して多くの患者さんを失ったあとで今度は腫瘍内科ローテーションをしていたところだった。彼女はERドクターの代わりに自分でcode statusの話し合いをした。またローテート先の指導医に相談して「彼女は緩和ケアが必要だ」と後押ししてもらったこともあり、本人と他の家族を呼んで治療のゴールについて話し合った。"We can keep her comfortable, give her time to get her affairs in order, and say goodbye"といい、話し合いが終ると、祖母は彼女を抱きしめて"Sounds like a good plan, doctor"と言った。そしてホスピスで快適にすべての人にお別れを言って一週間ほどで亡くなった。彼女はエッセーをこう締めくくっている;
 We do not always have to viciously battle death with our heroic measures. Sometimes the hero is the one waving the white flag.
白旗をあげるのは勇気がいることだ。でもそれがベストだと確信して思うなら、そうすることがベストだ。そして、それができる人がheroだ。