クロスマッチといえばCDC(補体依存細胞傷害)とFlowの二つと思っていたが、Virtual XM(crossmatch)というのもある。CDCとFlowをあわせてPhysical XM(PXM)と呼び、ドナーとレシピエントどちらの検体も必要なため、それを運んできて、実験室で混ぜて・・と手間と時間がかかる。とくに献腎ドナーの場合に、レシピエントを探す時間がかかってしまう。
それに対してVXMは、レシピエントの抗HLA抗体とドナーのHLAさえわかればよい。レシピエントに抗HLA抗体がなければ、ドナーがどんなHLAでもPXMは陰性になる・・はずである。問題は、本当にないのか?という偽陰性の可能性と、抗HLA抗体がある場合である(KI Reports 2022 7 1179)。
偽陰性の可能性として、検体への添加物や希釈の影響、共有する複数のHLA抗原に抗体が分散して結合してMFIが低くなる(ある意味、希釈される)、プロゾーン効果(抗体が多すぎて希釈しないと検出できない)などが挙げられる。
また、HLA抗体を検出するソリッド・フェーズ・アッセイのビーズは100個程度なので、そこに含まれない抗原に対するHLA抗体の有無はわからない。
(出典はBr Med Bull 2014 110 23) |
抗HLA抗体があった場合、MFIなどによってどこまで許容するかが問題になる。許容できない(unacceptable)抗原としてリストすれば、そのHLAを持たないドナーであればVXMは陰性で、おそらくPXMも陰性になるはずである。
MFIが低いなどの理由で許容できる(present but weak)抗原とみなせば、そのHLAを持つドナーも対象となり、抗体はDSAとなる。その場合、VXMを陽性・陰性とするかは施設の判断となる。
PXMをすればはっきりするが、PXMは自己抗体などがあると陽性になってしまうなどの限界もある。
VXMをPXMに代替してよいかについては議論があり(反論はKI 2020 97 659)、VXMとPXMを比較するUCLA Virtual Crossmatch Exchanges(Transplantation 2023 107 1776)なども行われた。
その結果、2023年12月28日にCMS Final RulesでVXMを最終クロスマッチとすることが許されるようになった。現在、CMS guidance document on virtual crossmatchingが編集中だという。