10/07/2024

腎移植の意義

  腎移植の意義のなかで、生命予後については以前紹介したが、QOLと費用対効果について。QOL向上は自明なようにも思われるが、システマティック・レビュー(AJT 2011 11 2093)を見ると、その傾向は確かなものの、すべてが薔薇色というわけではない。

(出典はAJT 2011 11 2093)

 現場にいると、術後の創傷治癒が悪い場合や、腎グラフト機能が低い場合(貧血を伴う)など、「そんなに元気(ハッピー)でもない」という声を聴くことは珍しくない。子供が産まれると直後は不眠などで幸福度が低下するという調査結果があったと思うが、それに少し似ているかもしれない。

 それもあってか、移植後の患者に”You've got a new baby!”と声をかけるスタッフもいる。「慣れないこと、不安、なんやかんやのケアなどで忙しく大変ですが大丈夫、一日一日できることからやっていきましょう」というメッセージが伝わりやすい。

 コストについては、周術期にまとまってお金がかかるが、以後は免疫抑制薬の分くらいで安上がりになるとよく言われる。ただし、移植のタイプによって費用に差があり、血漿交換などを要する不適合移植や、術後に透析を要する高リスク(KDPI>85)移植では多めにお金がかかる(AJT 2018 18 1168)。

(出典はAJT 2018 18 1168)