機械潅流後の腎臓移植は、1968年にウィスコンシン大学のDr. Belzerにより初めて報告された(NEJM 1968 278 608)。潅流液にUWという種類があるように、同大学・同医師は臓器潅流のパイオニアである。
さて、腎移植における臓器潅流・低体温で覚えておくべきスタディが3つある。一つ目は以前少し紹介した2009年のEUROTRANSPLANT試験。Mate kidney studyで、平均CITは15時間、DGFが氷冷保存の26%に比べて20%と有意に低かった。
ただし技術的問題か機械潅流群の25例が氷冷保存にクロスオーバーしており、メインデータではDCDのDGFは機械潅流群で数字上低いものの有意ではなかった。
二つ目は、2015年の脳死ドナー低体温試験(NEJM 2015 373 405)。34-35Cの低体温群で、36.5-37.5Cの正常体温群に比べてDGFが有意に低く(28% v. 39%)、試験は早期中止になった。
ただし、ドナーはランダム化されたがレシピエントはランダム化されておらず、プライマリ・アウトカムのDGFが低いのはよいが、より長期のグラフト生存率には有意差がなかった。
三つ目は、2023年の低体温と機械潅流を単独・併用した群を比較した試験(NEJM 2023 388 418)※。米国の6移植施設が参加したプラグマティック試験で、DGFの調整後リスク比は:
・低体温で機械潅流に比して1.72 (95%CI 1.35-2.17)
・低体温で併用に比して1.57 (1.26-1.96)
・併用で機械潅流に比して1.09 (0.85-1.40)
つまり、低体温は機械潅流よりDGF予防の効果が弱く、併用しても相乗効果はないという結果だった。ただ、二つ目と同様に、1年後のグラフト生存率に有意差はなかった。いまでも機械潅流が標準治療にはなっていない理由である。
※この論文も、昨年以前の職場で研修医向けのJournal Clubで取り上げていた。