「腎移植は生命予後の成績が透析よりも優れている」は、米国において良くも悪くも一貫して正しいため、腎移植を推進する大きな根拠になっている。腎移植ができる患者のほうが腎移植ができない透析患者より健康というだけではなく、(腎移植ができる)移植待ち透析患者と比較しても優れているからだ。
代表的なのは、1991-1996年に透析を開始された70歳未満の患者のなかから、初回献腎移植を受けた群と移植待ちリストに載って透析を受け続けた群を比較した1999年のスタディである(NEJM 1999 341 1725)。その結果、多変量解析後の死亡リスクは術後106日までは透析患者より高く、術後244日以降からはsurvival benefitが見られた。
では、高齢者の場合はどうか?
2013年、1995-2007年に透析を開始され(または先行腎移植を受け)献腎移植待ちリストに載った65歳以上の患者について、その心血管系リスクに応じた移植のsurvival benefitを調べたスタディが発表された(AJT 2013 13 427)。
また、移植のタイプについても調べ、ECD(extended criteria donor、現在の高KDPIドナー)、SCD(standard criteria donor)、LD(living donor)について分けて解析した。
すると、高リスク群・ECDであっても前掲論文と同様のトレンド(術直後が最もリスクが高く、以後低下する)がみられ、術後半年程度で死亡ハザード比は透析患者と等しくなった。さらに、生体腎移植を受けた患者については、そもそも術直後から死亡ハザード比が透析患者よりも低い結果が見られた。
これを受けて、移植施設はこぞって「生体腎ドナーがいるなら、ぜひ生体腎移植を(いなくても、探してみましょう)!」と啓発するようになった。・・が、実際には米国の生体腎移植は年間0.6万件程度で頭打ちである(それに対して、献腎はこの10年で年間約1.6万から約2.7万件に増えた)。※移植待ち患者は約9万人いる。