8/01/2024

ddcfDNA and RNA signiture

  腎臓の働きが異常な時には、腎臓に何かが起きているはずで、究極的には腎臓を生検して組織を調べる。だが、それ以外の方法となると、蛋白尿とクレアチニンくらいしかない。しかし、蛋白尿とクレアチニンは非特異的なため、もうすこし特異的に「この値が異常(あるいは正常)なので、拒絶である(あるいは拒絶ではない)」と言える検査を人々は探した。

 より普及しているのはddcfDNA(donor-derived cell-free DNA)で、血液中の細胞遊離DNAに占めるドナー由来DNAの割合を調べる。この割合が高ければ(カットオフは1.0%であるが、トレンドも重要である)ドナーの細胞が破壊されたことを意味する。AlloSure®とProspera®の2商品があり、前者が行ったDART試験(JASN 2017 28 2221)はddcfDNAがFDAに認可されるきっかけとなった。

 ただし、ddcfDNAは拒絶以外の細胞傷害(尿細管壊死、BKウイルス腎症など)でも陽性となるため、特異度は高くない。その反面、negative-predictive valueは80%以上と高いため、本来は「陰性だから大丈夫(assured)」という検査である。・・が、実際にはこの検査が陰性でも腎生検は行われる。そして、たいてい拒絶ではないが、CNI毒性などが分かればbelataceptに切り替える。

 次世代の検査に、RNA signitureがある。これは、患者血液のRNAを調べることで同定された拒絶で転写される遺伝子群の動きを検知するものだ。2021年に56才で亡くなったBarbara Murphy先生が中心になって進めてきた遺業であり、彼女と深いかかわりのあるVerici DX社のTutivia®のほかに、Trugraf®がある。前者は移植早期の拒絶、後者は移植後期の拒絶を調べるため、扱う遺伝子群は全く異なる。

 Tutiviaの診断確度を前向きに検証した試験(AJT 2024 24 436)によれば、positive predictive valueは75%、negative predictive valueは63%とさほど高くはなかったが、BKウイルス腎症ではこれらの遺伝子に動きがみられなかった点は興味深い(もっとも、それだけでBK腎症をrule inすることはできないが)。

 今はまだ、いずれの試験も「高いわりに・・」の感は否めない(Tutiviaは今のところ会社が検査費用を負担している)が、新しい診療の始まりという気がする。