腎移植を受けるうえでの禁忌といえば、管理不良の感染症、悪性腫瘍、喫煙、低アドヒアランスなどを思いつくかもしれないが、大事なものの一つが低血圧である。そのため、長年の糖尿病による起立性低血圧や長年の血液透析による低血圧は、腎移植を考慮するうえでの大きなハードルになる。
周術期の低血圧がグラフト予後に及ぼす影響を明快に示した論文がある(Clin Transp 2022 36 e14776)。ピッツバーグ大学のグループによるもので、献腎移植をうけたレシピエント562人を調べたところ、術前のMAPが1mmHg低下するごとにDGFのリスクが2%上昇していた。
[2024/8/22追記]透析中・後の低血圧に対して用いられるミドドリンがDGFリスクとなることを示した米国透析レジストリの後方視解析は2016年に発表され(Transplantation 2016 100 1086)、"a newly identified risk marker"と題されていた。相関であるが、移植前のミドドリン使用群は非使用群に比べてDGFが有意に高く(32% v. 19%、p < 0.05)、多変量解析後のハザード比は2.0(95%CI 1.18 - 3.39)であった。