8/28/2024

OR

 腎移植内科フェローシップはACGME認定ではないが、AST(米国移植学会)の定める要件があって、それを満たすことで移植センターのdirector資格が得られる。どれも件数で、外来フォローが何件、腎生検が何件、といった具合であるが、その一つが生体腎ドナー・レシピエントの手術である。

 そんなわけで、今日は仕事の合間に(同僚にカバーしてもらって)どちらも診ることができた。日本でも診たことがあり、米国でも手術そのものはだいたい同じあるが、違いもある。

・外科医が多い。A医師とB医師がドナーを手術し、C医師とD医師がレシピエントを手術し、E医師とF医師はその間に別の献腎移植を行っている。指導医もいるが、フェローもいる。腎移植を主にやる移植外科医もいるが、肝移植を主にやる移植外科医も手伝っている。

・手技が「どしどし」行われる。臓器の虚血時間を短くしたい意味もあるだろうが、始まる際にも日本のように「よろしくお願いします」の掛け声はなく、ぐいぐい、えいやっと、組織を押したり引いたりしながら分け入っていく。電気凝固の出力はCUTもCOAGも40Wである。

・グラフトの潅流液は、Custodiol®が用いられる。ヒスチジン・トリプトファン・ケトグルタル酸塩を含むためHTK solutionとも呼ばれ、名前は知っていたが初めて見た。脈管の露出と形成、縫合は同じだが、「さっさか」やるので、anastomosis timeは30分ほどである。

・いっぽうで、大きな組織ゆえにドナーとレシピエントの入室時間をうまくコーディネートすることが難しかったり、用意していなかった薬剤をオーダーして手に入れるまでに時間がかかったりする。

・面白いのは、麻酔科側と外科医側がまったく別の世界であることだ。タイムアウト、免疫抑制薬・フロセミド・マンニトールなどの注射タイミング、体位の変更、臓器潅流時の血圧維持、メチレンブルーの膀胱内潅流と尿道カテーテルのクランプなど、必要なコミュニケーションはするが、それくらいである。もっとも、これは日本も同じかもしれない。