8/03/2024

Steroid avoidance

 古くから用いられ、良くも悪くもfact of lifeとなっているステロイドだが、これだけ新しい免疫抑制薬が出ているのだから、そろそろステロイドを使わないレジメンがあってもよさそうなものである。

 そして、ステロイドを使わないレジメンは存在する。しかし、シクロスポリンの時代に拒絶が多い報告がみられたため、今でも普遍的にはなっていない。移植後1年時には米国腎移植患者の約30%がステロイド・フリーである(OPTN/SRTR 2017年次報告、in CJASN 2021 16 1264)。

 よく用いられるのは、副作用の影響がより心配で、拒絶の心配がより少ない、高齢者である。2005-2016年のMedicare加入患者を調べた結果では(Transplantation 2021 105 1840)、65歳以上の約24%がステロイド非使用レジメンであった。

 そして、6ヵ月-3年後の急性拒絶は約5%と、ステロイド使用レジメン群の8-11%よりも低かった。もちろん相関であり、ステロイド非使用レジメン群のほうが免疫学的リスクは低い。また、6ヵ月‐5年後のグラフト予後と生命予後にも差はなかった。

 また、1999-2015年の1施設報告(ミネソタ大学)によれば、ステロイド非使用レジメン群は新規糖尿病・心血管系・CMV感染症・無血管性骨壊死などの非グラフト関連合併症が有意に少なかった。

 拒絶と合併症はどちらも大事なため、結局は、”What are you trying to achieve?”ということになる。そのため、1か月以内に5mg/dまで減量することで副作用を最小限にし、そこからは生涯継続して拒絶のお守りにする、といったレジメンが多数派である。

 なお拒絶に関しては、basilisimab+ステロイド早期終了(8日目)とthymo+ステロイド早期終了(8日目)を比較したHARMONY試験があり(Lancet 2016 388 3006)、両群で生検で診断された拒絶と12か月後のグラフト・生命予後に有意差はなかった。

 ステロイド非使用患者の割合は10年以上変わっていないため、よほどすごいレジメンが見つかるまではこのままであろう。いつか、見つかるといいなと思う。