8/16/2024

Tacrologist

  入院診療はコンサルタントとして働くため、術後3ヵ月以内は移植外科、それ以降はホスピタリストが主な主治医となるが、副甲状腺摘出目的の内分泌外科入院や、腎摘目的の泌尿器科入院などのように、他科から相談を受けることもある。多彩な病態、重症度にどしどし触れられる貴重な機会であるが、最も重要な仕事は免疫抑制薬の管理、なかでもタクロリムスの調節である。・・そして、それが結構難しい。

 まず、結果がすぐに出ない!信じられないが、試薬が特別なのか、これだけ件数があっても5-6時間かかり、5時に採血しても11時ころまで待たなければならない。※外来だと、第2・第3便にまわるのでもっと遅くなる。

 そのうえで、「1日休薬したから低いのかもしれない」「12時間トラフではなく10時間トラフになっている」「まだ3回しか内服していない」「先週濃度が高くて用量をいくつに減らした」「先月に目標トラフ濃度が6-8から5-7に引き下げられた」「下痢をしている」「目標濃度から0.1しか外れていないが、上昇傾向のトレンドを見ると減らしておくべき」・・など、さまざまな要因を考慮しなければならない。

 そして、こうした熟慮のうえで出した決断は、腎グラフトの寿命と拒絶に直結しているのである。

 仕事をするまでは、タクロリムスといえば試験問題などがそうであるように、相互作用(エリスロマイシン、ジルチアゼムなど)を意識すればよいのかな?くらいに思っていた。しかし実際には、tacrologyとも言うべき、「タクロリムス学(道)」がある。Tacrologistを目指して、頑張ろう。


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