8/28/2024

Big Guns

 一般的な病原体が多い・・と言いつつも、免疫抑制患者に起きる特殊な感染症にも注意しなければならない・・というわけで、なかなか一筋縄で行かないのが、移植患者の感染症診療である。

 と習って、はや12年。未だに苦労しているが、新たに知ったことの一つがノロウイルス感染症である。ノロウイルスと言えば施設などでの集団感染が問題になる下痢性ウイルスだが、腎移植患者において慢性かつ消耗性の感染を起こすことが2009年に報告された(NDT 2009 24 1051)。

 Viral sheddingが多い時期でないと診断がつきにくいうえ、根本的な治療はなく(nitazoxanideが試みられることはある)、免疫抑制を弱めるのが唯一の対処法であるが、当然拒絶のリスクは上がるので、なかなか厄介な疾患である。とにかく、慢性下痢と消耗をみたら、ノロを疑わなければならない。

 もっとも、複雑な症例は感染症科にお任せになり勝ちだが・・。そんな頼れる彼らは、使う薬もごつい。Cefoderocol、Durlobactam/sulbactam、Ceftazidime/avibactamなど、高度耐性菌に用いられる新しい抗菌薬など。また、C diffにはfidaxomicinが用いられる。

 恐ろしいのは、上述の4種類のうち、2023年にFDAに認可されたばかりのDurlobactam/sulbactam以外の3種類は、すべて日本にもあることだ・・。耐性菌パンデミックとよく言われるが、PIPC/TAZ、Cefepime、Meropenem、Vancomycinなどが効かない菌が問題になっているのを痛感する。拡げぬよう、回診時はprecautionを徹底している。