8/22/2024

A2 Transplant

  以前も、血液型にA2型(AB型の場合はA2B型)というのがあって、A2型ドナーの腎臓はその細胞表面にA抗原がほとんどないため、B型で抗A抗体の少ないレシピエントにはABO適合のように脱感作なしで移植できると書いたが、実際に経験する機会はなかった。

 このたび経験することになり、事前にもらった参考資料(Transplantation Direct 2021 7 e662)を読んだ。勉強して、実地に活かしたい。まとめると:

・A2型が注目される理由の一つは、B型レシピエントの待ち時間が長く(2年以内の移植率は18%)、彼らの多く(70%以上)がアフリカ系やヒスパニックといったマイノリティーであること。

・多くの施設は抗A抗体8倍未満をカットオフにしている(UNOSは基準を設けていないが、高抗体価例では脱感作する)が、16倍以下をカットオフにしている施設もある(この資料を発表したAlbert Einstein College of Medicineのグループ)。

・同施設では、A2/A2B→B型(A2不適合)移植の導入はrATG 4.5mg/kg(通常、PRA20%以下はbasilisimab、それ以上はrATG)。DSAがあればIVIG+rATG 6mg/kg。維持はprednisone/MMF/tacrolimus。

・2015-2019年に行われたA2不適合移植は41件(適合は75件だから、全体の約1/3)。うち、抗A2抗体価が8倍以上の患者は11人(8倍が6、16倍が5)。

※レシピエントの平均年齢は53歳、約80%がアフリカ系とヒスパニック、38件が献腎(平均KDPIは52%)、3件が生体腎、4件が先行移植。8件で移植前DSAが陽性、3例でフロークロスマッチ陽性も、補体依存細胞傷害(CDC)クロスマッチは陰性。

・平均32か月の観察期間で、生命予後・グラフト予後・Cr・蛋白尿に有意差はなかった。TCMR・ABMR・各種感染症にも有意差はなかった。グラフト喪失の内訳はノンアドヒアランスによるABMR、MMF中止(敗血症)後の急性TCMR、術中の腎梗塞、COVID関連AKI。

・(プロトコルではなく、臨床的に適応があっての)生検では、拒絶所見のないC4d陽性が7例にみられたが、うちDSA陽性は1例。移植後の抗A2抗体価は、測られなかった(急性ABMRは1例も起こらなかったが・・気になるところである)。