入院している移植後患者全員を把握はするが、全員を毎日診て回る余裕はなく、回診もフェローだけ独自にまわる余裕はない(新しいコンサルトでは、できるだけ独自に把握・診察してプランを考えてから指導医に相談するが)。
逆に言うと、回診では指導医が患者と話すのをじっくり黙って聴くことができる。しっかりとした説明は、「なるほど、こういうふうに言えばよいのか」と思わされ、思わず頭の中でシャドーイングしている。
これも大事な教育機会なのだろうなと思う。患者への説明、言葉以外のコミュニケーションなどは、見なければ教わることはできないからだ。思い返せば、自分がよく使う言い回しのなかにも、「あれは〇〇先生の言い回しだったなあ」というものは多い。
さておき、きょう書き留めておきたいのは、"You only need to have an excellent wound care to recover."である。
「あとは、良い創傷ケアを受ければ回復するでしょう」、ということだが、筆者はとっさに「よほど良い創傷ケアを受けない限り、回復は難しいでしょう」と訳してしまった。
というのも、肥満(BMI 35以上)患者をどんどん移植するようになって、創の治りが悪くて治療に難渋する例をたくさん見るからだ。手術や洗浄、陰圧閉鎖療法などさまざまな手を使うが、入院を繰り返す例も多い。
創に限らず、ハイリスクな移植はたくさんある。しかし、前向きでなければならない。半分水の入ったコップはhalf emptyではなく、half fullである。そしてすべての雲には、日光が差し込む銀色の縁(silver lining)がある。
色々あってつらいだろう患者に掛ける言葉であれば、尚更だ。