2/06/2025

Big Change

  移植後に腎機能があまりよくない患者さんが心配したり不満だったりするのはよくあることだが、腎機能がよいからといってハッピーかと言うと、必ずしもそうではない。術後はとくに何かと症状がある場合もある。

 また、術後しばらくたった患者でも、生活が大きく変わったことで戸惑うことがある。透析に慣れて、友達もいたのに、透析から解放されて、友達とも会わなくなって、さあどうしよう・・と途方に暮れるのだろう。

 腎移植内科医はそんな時、「ともかく、腎臓はちゃんと働いています」と伝えがちだが、悩みの原因は腎機能ではない(腎機能がよいことによる悩み、とも言える)ので、そんな時はカウンセラーや精神科を紹介する。

Big Country

  米国は広大なので、車で2-3時間のところに住む患者さんもけっこういる。ただ、定期的な検査は近くにある分院または検査会社(Questなど)でできるし、診察もビデオでできるので、なんとかなる。また、1年経つと地元の一般腎臓内科医にケアをお願いする。

 私たちは年1回しかみない;ただし、診る必要がある患者はlong-termという枠で定期フォローする。何年移植施設で診るかはまちまちで、ずっと診つづけるという施設もある。

 通えないところから移植を希望して受診する場合もあり、そういう時には病院の近くに住居を確保するか、親せきや友人の家を利用するか、になる。献腎移植の場合は手術の予定が組めないので、少し困る。いつでも乗れる航空券を持っている、という人もいた。

 それにしても、米国は広大なので、何をするにも移動に時間がかかる。これは患者に限ったことではなく、たとえば「カンファレンスが〇〇州である」といっても、飛行機で4時間+時差2時間、といったことになる。2泊3日程度だと、最初と最後は実質移動日になってしまう(よほど早いまたは遅い便なら別だが)。


 

2/05/2025

Pulmonary hypertension

  移植前評価では必ず心機能を評価するが、なかでも重要なのが肺高血圧だ。高度の肺高血圧があると、黄色信号が点灯する。その理由は、心腎症候群・低心機能を反映していると考えられるためだ。

 ただ、肺高血圧にも肺血管・肺・その他などさまざまあり、なかでも体液過剰のサインである場合には、透析によって体液除去を図るなどで改善が見込める。また、過剰血流内シャントなどの場合にも、それを治療することで改善が見込める。もちろんPAHであれば血管拡張薬などの適応となるが、あまりそういったケースにはお目にかからない。

 ここまでだと、臨床で経験する事実と、ちょっと指導医に質問して得た耳学問の域を出ない。もう少し、調べてみよう。

2/02/2025

Tacrolimus Rapid Metabolizer

  タクロリムスの代謝が速い患者は、ピークが高くトラフが低くなる。そのため、トラフが低いからと言って用量をあげると、ピークが高くなってしまい、振戦・混乱などの副作用が出やすくなる。また、代謝が遅い患者にくらべてAUCが小さいため、ステロイドやMMFをある程度しっかり効かせておかないと、「3薬のつもりが2.2薬」というunder-immunosuppressionになる恐れがある。こうした問題点があるため徐放のEnvarsus®があり、そのほうがいろいろ安定はするが、代謝の早い患者では引き続き注意が必要だ。

Labs and Studies

  米国ではCRPを(膵炎、冠動脈疾患リスクとしての高感度CRPなどを除き)測らないので、白血球数に対する信頼度が高い。なので、無症状で「まあ移植後でステロイド高用量なので高くもなるでしょう」と思っている時でも、しっかり感染症の除外をしに行く。

 検査値といえば、カリウムに対する動きもしっかりしている。基準値から少し外れただけでも、必ず対処する。高カリウム血症が起りやすい(CNI、ST合剤、高血糖=インスリン不足、グラフト機能があまりよくないなど)ため先手を打っておく必要があるのと、心血管系疾患の合併が多く低カリウム血症による不整脈のリスクが高いためだろう。

 また、これも検査値だがQTcを非常に気にする。影響する薬剤(フルコナゾール、キノロン系など)を用いる際には、その前に必ず心電図をとる。

 

Desensitization

  脱感作は、特定の生体ドナーに対する抗HLA抗体を対象にする場合と、不特定の適合献腎ドナーが見つかりやすくする場合がある。

 ※ただし前者の場合も、あまりにも抗HLA抗体の抗体価(にある程度まで相当するMFI)が高い場合には、無理なのでスワップを模索する。患者に提供したい生体ドナーは別の患者に移植し、そのかわり他の生体ドナーから移植提供を受ける道であるが、その場合も適合ドナーが見つかりやすくするために脱感作が必要になる。

 適合献腎ドナーを見つかりやすくする方法は、ちょっとトリッキーである。なぜならば、臓器割り当てルールが改正されたからだ。高度感作患者は非常に高いポイント(200点)が与えられて、適合ドナーがいた場合リストのトップにくる。また、広いドナー検索範囲(アメリカ全国)から適合ドナーを探せる。

 これにより、ポイントがもらえなく(ドナー検索範囲が狭く)なりすぎない程度に脱感作したほうが、適合献腎ドナーが見つかりやすくなった。

 そして、リストする抗HLA抗体の選び方も重要になった。移植施設は、たとえば「この患者さんの抗A2抗体はMFIが3000ですが、うちは5000までは不適合とみなさず、リストには載せないことにします」と言える裁量がある。そうすれば、A2のドナーもこの患者さんに回ってくることになる。回ってきても、ドナー腎の質やクロスマッチの結果などによっては移植を断念することもあるが、すくなくともチャンスは来る。

 ただ、不適合抗体を載せなさすぎると、こんどはcPRAが下がってしまうので、ポイントがつかなくなったり、検索範囲が狭くなったりしてしまう。だから、ほどよくMFIのカットオフを選んだり、載せる感作HLAを選んだりする必要がある。

 脱感作は、頻回な血漿交換を必要とする上、そうして移植に持ち込んでも免疫学的リスクは高く、さまざまな追加治療(IVIG、抗CD20モノクローナル抗体、抗形質細胞小分子など)を必要とする。それらを要しない適合献腎ドナーが見つかるなら、それに越したことはない。


 

Phone call

 移植後、透析が不要になると、外来透析施設に連絡する。退院前に透析が不要になるのが理想だが、DGF(delayed graft function、移植後1週間以内に透析を必要とすること)が続くと、退院後も外来透析に通うことになる。

 患者さんとしては、ちょっと「出戻り」感があるが、だいたいは透析を離脱できる。その場合、外来のコーディネータから透析施設に電話して、その席(chair)をキャンセルする。いったんキャンセルするともう戻れない(万一そのあとで透析が必要になった場合は、入院するしかない)ので、少し慎重にはなるが、離脱して1週間もすればだいたい確実に手放せる。

 こないだ、そんな電話を横で聞いていたら、コーディネータもハッピーで、透析施設も患者さんの尿量がたくさんで腎機能も回復したと聞いて喜んでくれていた。こういう透析離脱もあると、あらためて実感した。


1/11/2025

Metformin

  メトホルミンは腎障害を起こすわけではなく腎障害時に使えない(Black Box Warning、実際には乳酸アシドーシスのリスクはフェンフォルミンよりずっと低い)のだが、米国に来てから「メトホルミンのせいで腎臓が悪くなった」と信じている患者さんに数多く遭遇した。

1/07/2025

Repeat Mismatch

以前に感作歴がある場合には、移植ドナーが同じ感作されたHLA抗原と共通のHLA抗原(たとえばA2)を持っている場合、抗体が作られやすい(たとえば抗A2抗体)。

1/01/2025

Immune Atlas of T Cells

  CD4+T細胞をTh1、Th2に分類したのはロチェスター大学のMosmannらで、1986年のことだった。Th1はIFNγやIL-12によって誘導され、STAT1転写因子によってT-betを発現する。そして主にIFNγを産生し、pro-inflammatoryだ。Th2はIL-4などによって誘導され、GATA3などの転写因子が活性化している。IL-4やIL-13を産生し、TNF-αやIFN-γに拮抗する。ただ、Th2サイトカインはB細胞を形質細胞に分化させる働きもあり、必ず移植臓器保護なわけではない(腎移植において、Th1/Th2浸潤細胞比が低いほどplasma cell-rich rejectionが多かったという報告もある、Blood 1993 82 2781)。

 Th1とTh2以外で初めて見つかったTh17(2005年)は、pro-inflammatoryだ。誘導にはIL-23が必須で、RORγtなどの転写因子が活性化している。主にIL-17を産生し(IL-17AからIL-17Fまである)、炎症や拒絶に関係する。

 番号の付いたCD4+T細胞のサブセットは、ほかにTh9とTh22がある。それぞれIL-9とIL-22などを産生するが、役割はコンセンサスを得ていない。

 番号はついていないが重要なサブセットに、TfhとTregがある。

 Tfhは胚中心でのB細胞成熟に決定的に重要だ。CXCR5を発現し、これによって濾胞のCXCL13と結合して局在することができる。ICOS、PD1、IL-21などを介してB細胞を胚中心に残すか形質細胞にして出すかを決める。腎移植で言えば、DSAの産生に欠かせない。

 Tregは2003年に発見され、CD4+CD25+(IL-2Rα※)で、マスター転写因子はFOXP3だ。炎症抑制・免疫寛容に働く(TGF-β、IL-10、IL-35などの抗炎症サイトカイン、granzymeによる細胞傷害、APC活性化の抑制、CD39による細胞外ATPの加水分解、IL-2の消費など)。

 ※IL-2Rはα、β、γがあるが、αが加わるとIL-2の親和性が何千倍も向上する。

 おまけに、Tfr、CD8+Treg、γδT、NKT(natural killer T-cells)、ILC(innate lymphoid cells)などがある。面白いのはγδTで、TCRがγとδサブユニットで作られている変わり者なのだが、サブセットのひとつであるVδ2neg γδT細胞は、末梢組織でウイルスを監視する。そして、CMVなどの感染時に急速に増殖する(J Infect Dis 1999 179 1)が、なかにはIL-17などを産生するものもあるため(Transplant Int 2014 27 399)、「ウイルス感染を契機に拒絶」の機序の一つかもしれない。

 参考文献:AJT 2023 107 2341、Nat Rev Drug Disc 2014 13 379