4/26/2025

忘れられない一言 81

  回診で退院前の患者になされた「退院後最も気をつけなければならないのは血糖です、血糖をコントロールしないと再入院になることもありますし、カリウム値が高くなることもありますし、手術創が治りにくくなりますし、さらに尿路感染症になりやすくもなります」という説明。

 本当に、これらすべてによる再入院をよく診る。

 術後3-4日で退院するため、ステロイド用量も未だ多く(20mg/d)、インスリンや血糖測定の指導などが間に合わないこともある。高カリウム血症も(GI両方の逆で)高血糖とセットでよく診る。創部も、抜鈎するのは術後3週間程度だし、尿路感染症についても尿管ステント抜去は術後4週間程度だ。

 逆に言えば、もしこれらの再入院が高血糖と関係しているのなら、ステロイドの早期(7日間)終了レジメンが助けになるかもしれない。例によって、免疫学的に低リスクの症例に限られるのかもしれないが。

 

VZV and CMV

 移植後の帯状疱疹は移植前にワクチンを打つので起きないと思っていたが、移植前のワクチンは必ずしも徹底されていないらしく、残念ながらたまに見かける。時に複数のdermatomeに広がることもあり、aciclovir静注の入院治療を要する。

 混乱しがちだが、aciclovir(valaciclovir)はHSV・VZVに効果があり、GANciclovir(valGANciclovir)はCMVに効果がある。免疫抑制過剰でCMV血症を合併することもあるので、そんな時は両方必要になる。

 免疫抑制薬を減らせればよいのだが、とくに移植初期はantimetabolitesを中断するくらいしかできないので、抗ウイルス薬に頼るしかない。

 

 

4/25/2025

Early steroid withdrawal

  以前ステロイド早期終了レジメンについて書いたが、実は早期終了レジメンを支持するきちんとしたRCTは存在する(Ann Surg 2008 248 564)。

 8日目からステロイドをゼロmg/dにする群と、その後も5mg/dまで漸減しながら6ヵ月継続した群をプラセボ対照で比較したもので、生命予後・グラフト予後・中等度/重度拒絶に有意差はなかった。生検で確認された拒絶は早期終了群で多かったものの、多くはBanff 1A TCMRで、ステロイドにより治療可能だった。

 その後このようなRCTは出ていないが、このRCT対象患者を平均約15年追跡した(OPTNデータで確認できる部分に限ってだが)ところ、長期予後にも有意差はなかった。また、OPTNデータから抽出した同RCTに当てはまる患者について調べたところ、同様の結果だった(JAMA Surg 2021 156 307)。

 ステロイド早期終了レジメンと言えば免疫学的低リスク群に試みられるというのが定説であるが、このRCTも生体腎ドナーが多く、cPRAは低く、アフリカ系は少なく、30%がnon-depleting antibody(バシリキシマブ)導入だった。また、感作イベントとなりうるDGF症例は除外されていた。

 それでも、逆に言えばRCTに当てはまる群はステロイド早期終了でよい(逆に言えば、ステロイド継続の必要はない、または、その必要性を正当化できない)とも言える。どこの国も出ステロイドに依存しているのは医療者で、そう感じるのにも事情があるのはわかるが、正しく怖れないと、良かれと思って患者を害しているかもしれない。



Many hands

 "many hands make light work"とは、人手があると仕事がはかどり助かるという意味だが、横になった患者をベッドの上で動かすときなどは、文字通り複数の人達で一斉に動かした方が軽くなって助かる。当たり前すぎてイディオムっぽくないが、いつか使う機会があるかもしれない。

Protocol Biopsies

  Kidney360の4月号に、移植後のプロトコル腎生検の是非が議論されていた。米国でプロトコル生検(PB, protocol biopsies)を行っている移植施設は1/3ほどでさほど多くはないが、まだまだ多いとも言える。それでこそのPRO and CONなのだろう。

 CON側は(Kidney360 2025 6 504)、免疫抑制薬の進歩やDSA把握レベルが進歩して拒絶が減ったこと、ddcfDNAやmRNA転写パターンなどのバイオマーカーがあること、subclinical rejectionを治療する意義が薄いことなどから、PBは不要という。

 対するPRO側は(Kidney360 2025 6 501)、CON側の論拠を認めつつも、ハイリスク症例にはいまだ有用であり、そうした症例を多く移植するhigh-volume centersではメリットのほうがデメリットよりも多いと主張する。

 最後にCommentaryがあって、低リスク群には不要と思われる(for cause biopsiesで十分)が、高リスク群の(とくに移植後早期の)PBは有用と思われる、と言っていた。そして、よりよいデータが必要、と締めくくっていた。

 データと言えば、0、1、2、3、6ヵ月後PB群と0、6ヵ月後PB群を比較した前向きに検討したデータはあり(AJT 2007 7 2538)、グラフト予後に有意差はなかった。ただしsubclinical rejectionの割合は6-9%と低かった。また頻回PB群はドロップアウトが多かった。

 先日患者家族とお話した際に、「ここは(同都市他施設とちがって)PBをやらないので負担が少なくて助かる」と言っていたのが印象的だった。「PBしておかないと拒絶を見逃すますよ?」と言われればやらなければと思うのが患者心理だろうが、必ずしもそうではないなら、いたずらに不安を煽ったり合併症に遭わせたりすべきではない。


VA

 VA(visual abstract)という、論文の要旨を1枚のポスターで分かりやすく説明するグラフィックを見かける機会がとても多くなったが、それを請け負う人が身近にいることもあり、すこし勉強になった。

 VAで特徴的なのはアイコンは、その素材をNoun projectやFreepikといったサイトをサブスクライブすることで入手するらしい。とくに、Noun projectはPowerPointのタブに組み込まれるので、作業がしやすいそうだ。

 いかに分かりやすく簡潔なVAを作るかは職人の技で、師匠と仰ぐ人のスタイルを見習いながら自分らしさを作っていくのだという。たとえば、スコットランドにいるMichelle Lim先生は草分け的存在で、VAが知見を広めるのに役立っていることを論文で主張してもいる(Ulster Med J 2022 91 67)。




4/20/2025

Reglan and Zofran

 制吐剤のひとつメトクロプラミドがなぜ日本でプリンペランなどという(チャランポランな)商品名なのかは未確認だが、なぜ英語の商品名がReglanというのかについての仮説を思いついた。

 スペイン語で「整える、直す、回復する」などを意味する動詞にarreglarというのがあって、3人称複数現在形はarreglanという。まだ裏を取ったわけではないが、関係あるように思えてならない。

 次の質問は、別クラスの制吐剤の一つで(どういうわけか日本では抗がん剤後などを除きほとんど使われることのない)オンダンセトロンの商品名がなぜReglanに似たZofranなのか?であるが、こちらはまだわからない。開発したGSK社に聞けばわかるのかもしれないが・・。

 【2025年4月27日追記】Reglanの姉妹薬にTigan(Trimethobenzamide)があることを知った。

 【2025年5月27日追記】音が似ているAllegraは、Allergyとalegrar(cheer up、make happyを意味するスペイン語)を掛けた言葉と推察される。

Lorna Doone

 ショートブレッド・クッキーといえば、スコットランドのWalkersが有名で、最近は日本でも駅のキオスクですら手に入るほどの人気であるが、こないだ患者さんのおやつにLorna Dooneというブランドが提供されていることを知った。元祖はシカゴのベーカリーらしいが、レシピ(とベーカリーそのもの)が売られるなどして、1902年からナビスコがこの名前で製造販売しているという。

 お菓子にしては格式の高いフォントなので、歴史があるのかなと思ったら、同名の小説があった(1869年、R. D. Blackmoore作)。あらすじを少し確認したが、当時にしても歴史小説で、ロマンスで、イギリス文学らしく?激情と複雑な家や位の事情と数奇な運命に翻弄される人々の物語で、Lorna Dooneはそのヒロインだった。




2, 8-dihydroxyadenine

 覚えにくい名前なので、略称の2,8-DHAと、2,8-ジヒドロキシアデニンと音訳も載せておく。腎病理でシュウ酸カルシウム結石を疑った時の鑑別疾患で、偏光顕微鏡で緑色に光る(positively birefrengent)ことで区別される。核酸の一つアデニンの代謝に関わるAPRT(adenine phosphoribosyltransferase)を欠損する稀なautosomal recessive disorderで、CKDやESKDをきたすほか、移植腎への再発も報告されている。報告は日本、アイスランド、フランスからが多いという(AJT 2014 14 2623)。核酸代謝異常であり、XO阻害薬で治療できる。

4/13/2025

CMV and BKV

 腎移植後に血中のviral loadを測る主なウイルスといえばCMVとBKVであるが、CMVはいったんでると毎週チェックして、治療効果があるかをこまめに調べる。もっとも、治療開始して効果が出るまでには1-2週かかるので、直後にウイルス量が増えたからと言って耐性などを心配する必要はない。いっぽうのBKはというと、直接の治療がないこともあって、なかなかすぐには消えない。また、諸臓器にCMV diseaseを起こすCMVと違って、BKウイルスが腎と尿路以外にあたえる影響はほとんどない。なので、まあ、免疫抑制薬を減らしてゆっくり様子を見よう、という感じになる(IVIGが試みられることもあるが、エビデンスは乏しい)。