Kidney360の4月号に、移植後のプロトコル腎生検の是非が議論されていた。米国でプロトコル生検(PB, protocol biopsies)を行っている移植施設は1/3ほどでさほど多くはないが、まだまだ多いとも言える。それでこそのPRO and CONなのだろう。
CON側は(Kidney360 2025 6 504)、免疫抑制薬の進歩やDSA把握レベルが進歩して拒絶が減ったこと、ddcfDNAやmRNA転写パターンなどのバイオマーカーがあること、subclinical rejectionを治療する意義が薄いことなどから、PBは不要という。
対するPRO側は(Kidney360 2025 6 501)、CON側の論拠を認めつつも、ハイリスク症例にはいまだ有用であり、そうした症例を多く移植するhigh-volume centersではメリットのほうがデメリットよりも多いと主張する。
最後にCommentaryがあって、低リスク群には不要と思われる(for cause biopsiesで十分)が、高リスク群の(とくに移植後早期の)PBは有用と思われる、と言っていた。そして、よりよいデータが必要、と締めくくっていた。
データと言えば、0、1、2、3、6ヵ月後PB群と0、6ヵ月後PB群を比較した前向きに検討したデータはあり(AJT 2007 7 2538)、グラフト予後に有意差はなかった。ただしsubclinical rejectionの割合は6-9%と低かった。また頻回PB群はドロップアウトが多かった。
先日患者家族とお話した際に、「ここは(同都市他施設とちがって)PBをやらないので負担が少なくて助かる」と言っていたのが印象的だった。「PBしておかないと拒絶を見逃すますよ?」と言われればやらなければと思うのが患者心理だろうが、必ずしもそうではないなら、いたずらに不安を煽ったり合併症に遭わせたりすべきではない。