10/18/2007

入院拒否

 入院すべき人が入院を拒否することがある。喘息発作で来院し、酸素を吸わなければならない状態の人が、仕事にいくと言い出す。心臓発作で来院し、いまにも心臓の血管がつまりそうな人が、家をちらかしたままで出て来たからいますぐ入院は無理、3日後なら大丈夫、と言い出す。

 緊急入院させるのは、いったん家に帰って入院の準備をすることすら危険な状態だからである。心電図や酸素飽和度をモニターするのは、いつ急に心臓や呼吸の状態が悪くなるかも知れないからである。そうでなければ、いったん帰って翌朝来てもらうことも理論上は可能である。ただ、入院して治療を早く始めるに越したことはない、とか、いったん帰るのも手間だ、などの理由で即日入院になることも多い。

 緊急入院は、患者さんにとって青天の霹靂である場合が多い。だから、「急変して命を落とすことも十分ありえます」とか、「仕事なら雇い主に事情を説明します」とか、「家のことは他の人に任せることができます」と提案しても、たいてい押し問答になる。まずは、「急に言われてびっくりするのもわかります」とか、「いろいろと事情がおありなんですね」と相手の大変な気持ちを受け止めることが重要なようだ。

 医者は強制できない。精神疾患で自傷他害のおそれがあると精神科医が認定した場合など、特殊な条件下では本人の同意なしに入院させることも可能だが、これはもう大変な修羅場になる。そんなわけで、理を説き情にうったえ、家族などにも事情を話す。そのうえで、入院してくれる人もいるし、やっぱり帰る人もいる。帰る場合も、じゃあ勝手にしろ、などと言ってはいけない。

 We are here to help.(いつでも来てください)

 ということである。私達はここで助けるため待っていますと。24時間、365日。