10/30/2007

解法と解答

 外来をしていると、今まで経験したことのない症状や訴えをどんどん経験する。そこで考えるのが非常によいトレーニングになる。
 考えて分からないことは、相談したり、検査を追加して補うしかないが、幸い当院にはよい指導医とよい設備があるので、それで正しい診断にいたることで、自らにフィードバックして考えと答えを一致させることができる。
 タクシー運転手と胸痛・・・タクシー運転手といえば長時間同じ姿勢で座っている仕事。大抵は喫煙者で、血栓をつくる危険は高い。肺塞栓症(肺に血液を送る重要な血管がつまる)を想起すべきであった。造影CTで、肺血管の先っぽのほうに血栓像を疑う所見があった。
 心房細動のある人の嘔吐と腹痛・・・ただのイレウスではないかもしれない。心臓に血栓ができて全身に飛ぶ危険がある人であり、急性上腸管膜動脈閉塞症(小腸に血液を送る重要な血管がつまる)を想起すべきであった。造影CTで上腸間膜動脈が詰まっているのがわかり、緊急手術となった。小腸の大部分が壊死していた。
 この方は認知症がつよく、症状がはっきりしなかった。高齢者、精神疾患、意識障害のある患者さんで、患者さんの訴えを鵜呑みにしてはいけないというのは鉄則である。