11/13/2014

Non-philosopher philosopher

 Edmund D. Pellegrinoは職業倫理と生命倫理の分野でアメリカを代表する学者だ。彼は患者-医師関係の重要性を認識することはバイタルサインを取ることと同じくらい重要だと私達に突きつける。そして患者-医師関係は患者の利益、患者への善を中心においた関係であり、それは築かれると共に時には守られなければならないと説く。たとえば彼はThe Commodification of Medical and Health Careという論文でPlatoを引用している;

 But tell me, your physician in the precise sense of whom you were just speaking, is he a moneymaker, an earner of fee or a healer of the sick?

 私達はこの問いについて考えなければならない。そして考えることは哲学の始まりだというSocratesの言葉をPlatoは引用している。だから私達はnon-philosopher philosopherなのだ。私達は無償で医療サービスを提供するほどナイーブではないけれど、医療は産業だと言い切ってはいけないような気持ちにもなる。しかし医療費は年々増加しているし、病院としては利益率をあげなければならない(いつだったか「休日の退院はベッドが空床になるのでその辺を良く考えるように」と言われて驚愕したことがある)。
 Pellegrino先生はまた、道徳についても説いておりそれが元になってAmerican Medical Associationが2001年にPrinciples of Medical Ethicsを採用することにもなった。Platoは徳の四要素にfortitude(逆境に負けない強さ)、temperance(節制)、justice(公正)、wisdom(智恵)を挙げているがPellegrino先生はこれにfidelity to trust(信頼がおけること)、compassion(共感)、integrity(それらを統合すること)、self-effacement(自分より他を優先すること、謙虚なこと)、そしてphronesis(アリストテレスの用語で洞察力のこと)を加えた。
 一日が終わったときに「ああ、今日も症例や手技に対してお仕事をしたな」と感じるか「ああ、今日も自分の経験と知識と能力を活かして病み苦しむ患者さんとその家族を癒したな(あるいは癒えるのを助けたな)」と感じるか。原点を考えさせられた。やはりこの本はよい(著者がPellegrino先生に会いに行ったら「この手の本は30年くらい出ていない、よくやれよ」と言われたそうだ)。つねに後者の道徳観を忘れていないか、戒めなければならない。