Francis Weld Peabodyはハーバード大学の教授をしながら市中病院でmedical serviceにも当たった人だが、この医師がこの本で取り上げられているのは、20世紀に医学が患者を治すべき対象の機械のように扱いはじめたことに強い憂慮を覚えそれに対して警鐘を鳴らしたからだ。彼はJAMAにCare of the Patientという人間性を大事にすべきだという警句を連載し、それは後にDoctor and Patientという彼の著作集に含められることになった。例えば彼はこんなことを言っている;
The good physician knows his patients through and through, and his knowledge is bought dearly. Time, sympathy, and understanding must be lavishly dispensed, but the reward to be found in that personal bond which forms the greatest satisfaction of the practice of medicine.
これを読むと、私が初期研修をしていたときに教えに来た米国人医師の恩師を思い出す。最初に彼に会ったときにはその病歴・身体診察などの鋭い観察に基づく診断能力と膨大な知識に舌を巻いたが、米国で彼の診療を見たときには彼がまさにここに書かれたようにたくさんの時間とsympathyとunderstandingを使って患者さんのことを知り尽くしている、その凄さを尊敬した。患者さんはpatientsであるまえにpeopleであることを忘れてはならないと改めて思う。