11/05/2014

忘れられない一言 21(aka Maimonides)

 Moses Maimonides(Rabbi Moses ben Maimon、Rambam)はイスラム・ペルシャ文化全盛期を生きたユダヤ人で、ユダヤ教信徒にとっては医師よりむしろ聖職者として有名な人である。RhazeもAvicennaも情熱を持って敵味方・貧富に関係なく患者を癒したが、医のアートと医学教育を語る上で彼ほど献身的に患者や若い医師に尽くした人はいないそうで、Osler卿は彼の情熱と智恵に敬意を込めて彼を”Prince of Physicians”と呼んでいる。
 Maimonidesは「Maimonidesの誓い」と「Maimonidesの祈り」の二つでも知られている。これは実際には彼の言葉ではなくImmanuel Kantの弟子Markus Herzの言葉だとも言われているが、誓いのなかにこんな言葉があって私達の襟元を正してくれる。

 Today he can discover his errors of yesterday and tomorrow he can obtain a new light on what he thinks himself sure of today. Oh, God, Thou appointed me to watch over the life and death of Thy creatures; I am ready for my vocation and now I turn unto my calling.

 前半は「昨日より今日、今日より明日」と言っているわけだが、ともするとルチーンな「お仕事」になってしまう私達へのよい戒めだ。後半は、自分は神に神の創造物の生死をwatch overするよう選ばれたと言っている。このwatch overという言葉には、生死をどうこうするのは神で、自分はそれをアシストするという意味が込められているように思える。Maimonidesもまたヒポクラテスに始まりいままで紹介した医師達と同様に、生活習慣や食事を治療の根幹に置いていたが、それは現代にも通じる話だ。