11/27/2014

The 25 Rules of Considerate Conduct

 次に紹介されていたのが、Johns Hopkinsが立ち上げたCivility Projectの産物、The 25 Rules of Considerate Conductだ。Healing skillsを磨きたいなら、これらを意識して診療(のみならず生活)するとよいだろう。

  1. 注意を払う:Hippocratesの「全てを観察せよ」という教え、Osler卿の「五感すべてを使って診療せよ」という教えの流れを汲むものと理解せよ。
  2. 相手を大事にし尊重せよ:たとえば、患者の付き添いがいたとき、無視せず彼らにも自己紹介し患者との関係を知るよう努めよ。
  3. 最善を考えよ:「あ~また鎮痛麻薬がほしくて来たのか」などと最初から決めてかからず(実際そうでも)最初は希望と楽観を持って患者と接しろ。
  4. 聴け:よく聴けば診断もつくというものだが、それ以外、医療チーム間のコミュニケーションにおいても「聴いているよ」と示し傾聴の技術を向上させることが重要だ。
  5. 受け入れよ:文化価値観の差異を意識し尊重することで診療の質が向上する。
  6. 優しく丁寧に話せ:たとえば「どうされましたか?」で始め「他になにかしてあげられることはありませんか?」で終わるのは丁寧な問診だ。
  7. 悪口を言うな:患者の悪口、医療者の悪口は無論、人のケアの悪口も言うな(悪口と建設的な批判を受け入れあうこととは別だ)。
  8. ほめよ:患者さんが何か少しでも健康のためになったことをしたならそれを認めてほめろ。心理学者Carl Rodgersがいう「unconditional positive regard(無条件によいとみなされること)」は患者の診療体験をよいものにする。
  9. どんな些細な「いやです」も尊重せよ:医療者のレコメンデーションに患者が同意しない時には、患者の意思を尊重しなければならない。ただし、同意しなかった場合に起こりうることを十分に理解してもらうこと。
  10. 人の意見を尊重せよ:プライマリケア医とコンサルタント、それぞれの立場と専門性を尊重してこそ良いケアが提供できる。
  11. 身体に気をつけよ:自分が健康でなければ人を健康にすることはできない。
  12. 同意せよ:おたがい同意できないときにも、同意できないということを同意することはできるわけで、その際に悪態をついたり礼を欠いたりしないようにせよ。
  13. 静かにせよ(そして沈黙を再発見せよ):沈黙によって患者に返答の十分な時間を与えることで、こちらから沈黙をさえぎっていては得られなかった情報が得られることもあるだろう。話しにくいことを話してもらえるように時間を与えることもまた礼儀と知れ。
  14. 人の時間を尊重する:「待たされる」ことほど患者満足度を下げるものはない。たとえそれが医療現場の現実であっても、自分の遅刻は問題外だし、度を過ぎたoverbookingも避けるべきだ。それでも全ての手を尽くしても遅れたならば、誤ることだ。この筆者は自分の主治医に待たされ外来をrescheduleすることになって不満だったが、その晩に主治医から謝罪の電話を貰って彼を尊敬し満足したという。
  15. ひとの空間を尊重する:患者の病室は患者のスペースなのだから、入っていいか、座っていいか、診察を始めて良いか、一声掛けるのが礼儀と知れ。
  16. 心の底から謝罪せよ:間違えが起きたとき、医師は説明や情報提示のみならず患者(家族)の謝罪の要求にもできる限り応えるべきである。
  17. 自己主張せよ:患者のために主張すべきときは主張せよ、たとえそれが困難であっても。保険会社が拒否した治療でも必要と思ったらアピールすべきだし、コンサルトしたら患者情報がコンサルト先に正しく十分に伝わったかを確かめるような、going the extra mile(もう一歩を踏み出す)医師たれ。
  18. 不要な個人的質問を慎め:患者の個人情報を得る特権を乱用することが許されないのは言うまでもない。
  19. 患者をゲストとして扱え:とくに高齢者や障害者でアシストを必要とする患者に対しては、優しさと配慮をもってそうせよ。
  20. 配慮あるゲストとなれ:往診するときには、医師の都合だけでなく往診先の都合を考えて時間を設定し、往診先に着いたら椅子に座るの一つとっても患者環境に踏み込んでいるという敬意を払ってしろ。
  21. よほどのことがない限り患者に個人的なお願いをするな:医師・患者関係においては医師が圧倒的な力を持っている。職権乱用にあたるお願いをするな。
  22. ぐだぐだ文句を言うな:医療現場は不満のもとがいっぱいかもしれないが、それらに文句をいう隙間はないし、ネガティブな態度は診療の質を下げる。
  23. 建設的な批判を受け入れ合え:患者、同僚医師、多職種、指導医、皆が多くの教訓を教えてくれる。批判しあえる環境で人は伸びる。ただ受け入れるときには客観的に受け入れよ。英語でよく"don't take it personally"と言うが、反省すべきを反省して次に活かせばよいのであって、ふてくされたり凹んだり諦めたりするべきではない。
  24. 環境と動物を尊重せよ:人だけでなく。Schweitzerのいう「生命の尊厳」だ。動物実験は適切におこなわれているか、産業廃棄物は適切に処理されているか。
  25. 責任転嫁するな、そして人を責めるな:患者が怒っているときの対処法に「トリプルA」というのがある。
  • Acknowledge:患者が怒っていることを「私はあなたが怒っていることを認識していますよ、わかっていますよ」というメッセージを伝える。
  • Accept:責任が自分にあるのなら、それを認めて受け入れる。
  • Amend:状況をできるだけ修繕する。

 それでも解決しなければ訴訟沙汰に至ることも有るだろう。この本の第八章第一節はそれについて書いてある。見出しも「医療過誤の定義」「よくある医療過誤」「あなたの弁護士があなたに知ってほしいこと」など、ベテラン医師の経験をもとにした刺激的なものだ。早く先が読みたい。