12/23/2024

Month, Day, Year

  移植後外来のカルテでは、移植日、退院日、ステント抜去日、生検日、超音波日、BKV-PCRチェック日、donor-derived cell-free DNAチェック日など、さまざまな日付が重要になる。そして米国の日付は月/日/年で記すが、面倒なので月/日で書くことが多い。

 しかしそれは、年余にわたってフォローする文化で診療してそれを大事に思っている指導医からすると、「年がないなんて!」という思いを起こさせると知った。「私たちは移植後1年しか気にしません」と暗に言っているように感じさせるのだという。

 なるほど、と思った。年を4ケタで書くのは大変だから、下2ケタ(24、25など)で書くようにしようと思った。


Social Support

 Social supportはとても重要で、移植前に「よい(great)」サポートがあると評価された患者さんが、移植してみると全然そんなことはなかった、ということは、残念ながらよくある。

 自分で何でもできるしっかりした患者であっても、サポートしてくれる家族がいたほうがよいのは間違いない。しかし、自分で何でもできない、さほどしっかりしていない患者となると、サポートしてくれる家族は必須である。

 そして、ただ家族がいるだけではだめで、サポートには「検査や受診に連れていける」「自分の家に住ませることができる」「住ませるだけでなく、世話することができる」と段階がある。

 さらに、状況が変わったときのバックアップサポートも必要だ。患者の状態が変わることもあれば、サポート側の状況が変わることもある。

 より高齢でよりフレイルでよりハイリスクな移植(腎グラフトの成績があまりよくない、そして移植後にさまざまな合併症が起きる;あるいは、再移植、再々移植)をどんどんするようになった昨今のアメリカでは、サポートへの配慮不足がより一層問題になっていると感じる。

 「それでも透析にままでいるよりはよい」ことになっているため、今後もその傾向は続くだろう。いままでの選りすぐりで健康的な優良ケースに対応したモデルが通用しないのは当たり前である。もうすこしグダグダした(社会的資源をより投入した面倒見の良い)モデルにシフトしていかなければならない。つまり、予算か。



Talk via Zoom

  カンファレンスがすべてZoomだ、と面接時に聞かされた時には、つまらないなあ、と思った。

 しかし実際仕事が始まると、聴く分には非常に便利である。会場まで行く必要がないし、オフィスにいれば聴きながら調べものをしたり、忙しいときには仕事をすることもできる。画面は小さいが、スマートフォンで参加することもできる。

 ただ、発表するとなると話は別だ。

 先日Journal ClubとM and Mで発表してみると、相手の反応が返ってこないのに戸惑った。観客のいないスタジオでTV向けに漫才をするような感じだろうか。相手の反応が見えないのに、相手は見て(聴いて)いるのだから、余計に「大丈夫かな」と感じる。

 それで、「ええい、こうなったら構うものか」という気持ちになる。結果的には好評価で一安心であったが、どっと疲れた。そのうち慣れるだろう。

 なお、今でも少ないながらin-personのカンファレンスはある。それは、lunch-onのカンファレンスである。そんな日は、たとえハイブリッドでも会場に(何なら少し早めに)着くようにしている。


Bandaid and Bottom

  時代と場所、誰が使うかで英語の表現にも違いがあって、今回の渡米で初めて聞いたという表現もいくつかある。たとえば、band-aid。問題の原因を解決しない応急処置、といった意味合いで使われる。それに対して、問題の原因にたどり着きたいときには、get to the bottom of ~という表現を使う。

12/17/2024

Texas Red

  コンゴ・レッドはアミロイドの染色だが、テキサス・レッド・フィルターを通して蛍光顕微鏡で観察すると、その感度が大きく改善する。日本ではDFSを使うようだが。

Living donor only

  高齢の移植候補が評価に訪れた際に、多くの移植施設はliving donor onlyのオファーを提示する。年齢だけでなく、たいていは併存疾患やフレイルなどもあるので、よほど待ち時間が長くない限りは、献腎移植を受けるまでに5年くらいかかる。そうなると、70歳の患者は75歳というわけで、それまでにsickerになってしまうこともある。そうはいっても、皆にpotential living donor(s)がいるわけではないので、いない患者はdeceased donor transplantをオファーしてくれるまで他の(よりアグレッシブな)施設をあたる。

さっとたどり着く診断

  移植後に腎機能が今一つな場合、考えることはたくさんあるが、すべての鑑別診断に等しく可能性があるわけではなく、こういう場合はX(Y、、)というパターンがある。DCDや高KDPIなら急性尿細管傷害、血圧が管理不能でCrが体液量に敏感ならTRAS(移植腎動脈狭窄)、術後にドレーンが挿入されたなら尿リーク(排液のCrをチェック)、FSGSで蛋白尿がすぐに多量にでるならFSGS再発、利尿薬や下痢といったシチュエーションで高カリウム血症を伴っていたら「血行動態(hemodynamic)」、つまり腎前性+タクロリムス濃度が高い、高度感作例やアドヒアランス不良例であれば拒絶(ただし、CNIを怠薬しているとCrは却って低くなることもあるが)、、といった具合だ。指導医たちは、こうしたアルゴリズムを持っているので、その患者ごとに必要な情報を最短距離で得ることができる。一緒に診療しながら、貯めていくしかない。

Afterload reduction

  心不全(HFrEF)の後負荷といえば、硝酸薬(isosorbide mononitrate)とhydralazineが定番という。腎臓内科医からすると第3選択薬くらいのhydralazineがけっこうよく処方されており、心不全が適応の場合は少し切りづらい。しかし、心不全が改善している場合や、立ち眩みなどの症状が目立つ場合は、切る。

12/11/2024

Listening to a kidney

  ある指導医が「私がフェローのころ、ある(高名な)先生は私が腎臓の聴診所見を記載するまで私のカルテにサインしなかった」と教えてくれた。移植腎の腎動脈狭窄を示唆する所見がないかを必ずチェックしろと言う意味だ。感度特異度が優れていないとはいえ、おっしゃる通りである。極論すれば、儀式的な肺の聴診よりも意義がある。ましてnativeとちがって移植腎は1個しかない。

Feedback

  研修をしていれば、さまざまなフィードバックがある。たとえば:

・I feel much better now(患者が、信頼できない相手に手技をされると思って不安だった)

・This is what I meant by ...(~するようにと言ったはず)

・I came to hospital at 5am(私がフェローのころは、朝5時に来て、指導医と回診する前に完璧に情報を集めてカルテまで記載していた)

 大事なことは、You are ... で始まる文章にしないこと。そういうのはjudgementalでよくないとされている。

 最後については、「朝5時に来られないのなら採用しない」と言えるほどフェローシップの人気がないとも言えるし、朝5時にくるのが当たり前のフェローシップは姿を消しつつあるとも言える。朝5時に来られないなりに、把握するしかない。

 

PD and KT

 腹膜透析は移植までのブリッジとして行われる面もあり、できればどちらも知っておきたい。さまざまな観点からエビデンスをまとめたレビュー(Kidney360 2022 3 779)によれば:

・HD患者に比して移植を受ける割合が高い

・DGFの割合は報告によってさまざまだが、残腎機能がある分(除水効率などのため体液が多い分)PD患者が有利かもしれない。

・拒絶が多いという歴史的な報告があるが、新しい報告では否定的

・グラフト塞栓症のリスクはHDに比して高い報告が過去に出たため、注意が必要。HDではヘパリンが用いられていること、凝固異常のためHDが不適合な患者がPD群に含まれている可能性、フィブリノーゲンなどが血中に多めなことなどが原因に推察されている。ただし、こちらも最近の報告では有意差はないという。

・DGF中のPD!これが一番のトピックで、腹膜炎とリークの合併症が懸念されるが、注意深くやれば大丈夫な報告がでている(米国のはKI Rep 2021 6 1634)。彼らのガイドラインは:

①移植外科医に相談する

②以下がないことを確認する:腹膜の破綻(peritoneal breach)、イレウスによる腹部緊満、腹腔内の病態(感染、出血など)、生命にかかわる高カリウム血症、低酸素血症と肺水腫をともなう体液過剰

③実施の際にはCCPDのみを用い、まず1.5%糖液500mlでテストし、痛みやリークがなければ1L×90分貯留×6サイクルを行い(ただし仰臥位を保つこと)、徐々に貯留量を増やすが移植前貯留量の2/3を越えないこと、リークや排液混濁をチェックし、PD液にはヘパリンを入れないこと

・PDカテーテルの抜去時期にコンセンサスはないが、欧州は早期抜去を推奨。移植と同時(DGFの可能性が低い、生体ドナーの場合など)、6週以内などあるが、遅くとも3ヵ月以内。

・グラフト廃絶後のPDは少数派だが、禁忌ではない。免疫抑制薬は残せば腹膜炎のリスクになるが、残腎機能を保つことにもなるため微妙(ただし、グラフト廃絶後のPD患者の残腎機能の低下は未移植PD患者よりも速い)。

・他臓器移植患者のESKDとPD:未移植PD患者に比して生命予後や感染症のリスクに有意差はない。CNIと被包化腹膜線維症(encapsulating peritoneal fibrosis)のリスクや、ステロイド下の糖尿病リスク(PDは糖液を用いるため)が懸念されるが、安全に行うことができると結論される。


12/10/2024

Swap and Offer

  自分の提供したいレシピエントと適合しない場合に試みられるSwapは、たとえば体格のミスマッチなどの相対的な場合にも考慮される。だが、ドナーとしては、自分の腎臓が知らない人に移植される(結果、他の人の腎臓が希望するレシピエントに移植される)というのは悩むところである。ABOやHLAが適合なら、やっぱり希望するレシピエントに移植したい、というのも人情である。

 「提供を希望するレシピエントに、献腎移植のオファーが来たらどうするか?」というのも、悩ましい。平均値的には、献腎移植より生体腎移植のほうが成績はよい。だが、献腎・生体腎ドナーの年齢や病状によっては、その限りではないかもしれない。献腎移植は、緊急で行われるのでドタバタする。そして何より、生体ドナーの侵襲がなくて済む。

12/03/2024

Leadership

  Leadership、という言葉をよく聞く。役職にある者、経営側にある者、といった意味の美称である。