6/28/2025

foscarnet and maribavir

  永らく移植患者を苦しめてきたCMVも、valcyteが登場してCMVが予防可能になったうえ、CMV diseaseもコントロール可能になってきた・・と言いたいところだが、感染症の常で、耐性が問題になってきた。とくに腎移植患者はvalcyteの用量調節が難しく、減量したらundertreatmentになってしまい・・ということもある。

 耐性CMVの第一選択薬は、Foscarnetである。腎毒性が知られているが、経験的にはあまり困らない。むしろ、腎毒性予防に用いられる生理食塩水が、とくに心腎同時移植患者などで問題になりうる。MaribavirもCMV治療に認可されている(予防に認可されたのはLetermovir)が、治験時代からウイルス量が多いと(何十万copies/ml)治療に失敗しがちと知られている。

Cresemba

  Cresemba(isavuconazonium)という薬がinvasive Aspergillusやmucormycosisに用いられていることを知った。Isavuconazoleのプロドラッグだという。移植患者の真菌症ほど心配されるものはなく、ちょっとした副鼻腔の所見であっても軽く考えてはいけない。また、免疫抑制薬を中止するわけには行かず、減薬したらしたでこんどは拒絶を招く(かえって免疫抑制の強化が必要になる)など、とても厄介である。なお、一見azole系にみえない名前なので、タクロリムスとの相互作用などの考慮を忘れないようにしたい。

Greater than the sum of parts

 The whole is greater than the sum of partsとは、チームのシナジーやケミストリーを表す言葉である。アリストテレスがそれに近いことを書いている(が、少し違うので、misquoteとされる)。うまくいっているチームほど、観ていて気持ちの良いものはない。また、チームを越えて、さまざまな職種・部門が協力・連携して大きな力を生み出しているのを見るのも、気持ちが良い。そうありたいものだ。

当て推量

  診断や病状が分からないなかで検査や治療を試みなければならないことは、臨床で起こりうることだが、そうした状況をshooting in the dark / fishing in the dark(当て推量)と説明することがある。

SRL and angioedema

  シロリマス(シロリムス)の副作用と言えば蛋白尿・創傷治癒遅延・高脂血症・下腿浮腫・口腔潰瘍・間質性肺炎などが有名だが、血管浮腫もある(報告はAJT 2004 4 1002-1005)。

Square 1

 Back to square 1とは、「振出しに戻る」「元の木阿弥」という意味で、直観的にはすごろくを想像する言葉である。すごろくに似たsnake and ladder gameというゲームがあって、出発点がSquare 1である(ゴールはSquare 100)。

 また、アメリカの小学校で九九の代わりに用いられる掛け算の表、multiplication table(12×12まである)のはじまり、1×1も、文字通りsquare 1(squareとは平方、二乗の意味)。
 
 ただ、正式な語源は1920年代の英国で、サッカーのラジオ実況だという。コート上の位置をラジオで説明するため、ゴール近くの領域をsquare 1と称していたという。ラジオ野球中継で「三遊間」などと言葉で場所を説明するのと似ている。
 
 ところで、木阿弥とはなんだろうか?諸説あるらしいが、ある武将の死を隠すために代わりをつとめされた木阿弥なる人物が、その武将の子が成人して死を隠す必要がなくなったため、元の木阿弥に戻ったという伝説に基づくとか。

6/20/2025

Karius test

  Cell-free DNAといえばドナー由来cell-free DNAを移植後臓器拒絶のモニタリングに用いるが、感染症科領域ではantimicrobial cell-free DNAを用いることがある。培養で菌が生えない場合も、血液を流れる菌の欠片を見つけることができるというわけだ。ただ、もちろん最初から用いることはまずなくて、培養・生検など手を尽くしてもわからない時の最後の手段という感じである。結果も、みつかった欠片が起因菌とは限らず、解釈が難しいことがある。

CGM

  アメリカの薬局に行くと、家電(あるいはスマートフォン)店かと思うような一角がある。各種の血糖測定器を扱うコーナーだ。処方箋がなければ買えないかというと、そんなことはない。アメリカにはなんでも自分のことは自分でやる気風がある。自分の健康をチェックするために自分で買いたいという人には、スマートウォッチのように血糖測定器も売ってくれる。CGM(持続血糖測定モニター)も売っていて、身近な人がつけていたりする。








AAKH and Alex Azar

 AAKH(Advancing American Kidney Health)イニシアティブといえば、第1次トランプ政権時代に両党派で実現したexecutive orderであり、大胆な目標を掲げたことで知られている。たとえば、2025年までに80%の末期腎不全患者が在宅透析または移植をうけているとか、2030年までに年間移植件数を2倍にする(5万)とか。

 ラディカルな改革が通った背景には、当時HHSの長官だったAlex Azarの個人的な経験があった。というのも、彼の父(眼科医)が腎臓病だったからだ。闘病経験を間近に見て(在宅透析から移植に至り、2020年に死去)、いつか腎臓医療を変えると心に決めていたのだという。

 透析がアメリカ公的医療でカバーされるようになった背景にも、公聴会で自ら議員たちに訴えかけた、透析患者さんの切実な声があった。それから50年、システムは巨大化し社会は分断されたが、いつの時代も、個人の切実な思い(と、やりとげる粘り強さ)には、それを上回る強い力がある。

Ads

  日本は処方薬のCMが許されていないと思われ、病気を紹介するCMを見かける。「お医者さんに相談しましょう(そうすれば、弊社の薬を提案されるかもしれません)」というわけだ。いっぽうアメリカは許されているので、実によく見かける。

 どのCMもほぼ同じパターンで、病気で困る患者役が薬によって人生を楽しめるようになるというもの。そしてナレーターが副作用の1文を読み上げた後、"Talk to your doctor(お医者さんに相談してください)"と促す。

 というわけで、患者さんは本当に相談してくれる。腎疾患にも治療選択肢が増えてきた(IgA腎症など)という意味では素晴らしいことだ。そうした新しい治療についてのデータをキープアップしていないと、「そんな薬があるんですか?」と患者さんから知ることにもなりかねない。

 もちろん、薬が適しているかは患者ごとに異なるので、「この薬はあなたの場合にはこういう点で適しています(がこういう点で適していません)」と説明しなければならないが。