移植は手術なので、手術を中心に保険(医業収入)が支払われる仕組みになっている。しかし、移植は虫垂摘出のように「やればそれで終わり」という治療ではない。そのため移植後のさまざまなケアにも医療資源が必要(手のかかるケースが増えれば尚更のこと)だが、これらは手術を中心に得たお金でやりくりすることになる。
しかし、ハイリスク症例が増えてくると、周術期の費用がかさむ(入院日数が伸びる、入院後の透析費用、など)。そのため、いろいろ収入を得る方法(と支出を抑える方法)を考えなければならない。
たとえば、ローリスク症例の底上げ(紹介率の向上)、340B drug pricing programを活用してBelatacept点滴から収入を得る(そのため、可能な限り自施設のinfusion centerで行うようにする)、移植待ち患者リストを逐一見直して必要な検査がきちんと行われるようにする(そのぶん収入になる)、medicare cost reportを活用して患者診療にかかった時間をきちんと記載し報告する、など。
支出を抑える方法は、コーディネーターなどスタッフのretention向上(離職率低下:スタッフが離職すると、リクルートメントだけでなく、新スタッフの教育に時間を要するため、ダメージが大きい)など。
また、治験の収入を増やす意味では、腎グラフト予後の代理エンドポイントとして期待されるiBoxが、現在FDAで審議中という。あくまで代理エンドポイントではあるが、認可されれば、長期フォローアップにかかっていた手間とお金が節約できる。
こうした話は、C-suiteやleadershipとの話し合いで行われるが、できれば移植センターの管理職が自らやりくりして提案して不採算なら撤回する、などのイニシアチブをもって取り組んだほうが、信頼関係も得られ、win-winになりやすい。
ただ、手術に診療に・・と忙しいと、そこまで手が回らないのも確かなようだ(cost reportのように「ちゃんと報告しただけで収入が増える」low-hanging fruitでさえ、多忙だとできなかったりするらしい)。
いずれにせよ、移植センターの宿命は、とにかく拡大し続けることにある。移植にかぎらず、手術や手技というのは、そういうものなようだ。ただ、一気にやろうとしても、人員や資源が希薄になって破綻するので、持続的成長がポイントだ。移植件数増加のインセンティブIOTAも、3年間のrolling averageを成長率の尺度に用いている※。
※たとえば、毎年100件でやってきた施設が資源(資本)を投入してIOTA初年度に120件行ったとしても、次年度に120×1.2=144件行う必要はなく、106(rolling average)×1.2=127件行えばいい(その次は100、120、127の平均115×1.2=138件)ということ。