移植学会の行う会議(Cutting Edge of Transplant)の前日、New York TimesがOOSに関する記事を載せた。私を含め、会議初日の朝、飛行機に乗る前に記事を知った人がとても多く、何かにつけてこの記事が話題になった。
High-impact non-medical literatureであり、記事の正確さに言いたいことがある関係者は多かったと思われるが、publicに対するaccountabilityが足りないという反省は、されていた。「私たち自身がもっと発信しているべきだった(ある朝New York Timesに出し抜かれるのではなく)」という声は多かった。
秘密にしていたわけではないが、public opinionを形成するには発信の程度が足りなかった。そして、発信を十分にしないと、ワクチンなどと一緒で、正しいかどうかに関わらず、I don't like it(または、I don't like you)という感情が凝り固まってしまう。
たとえば、臓器のnon-useについて言えば(OOSが始まってもnon-useは増え続けている)、non-useの割合そのものは変わっておらず、臓器移植そのものが増えているので、必然的にnon-useの件数も増えている。むしろ、ここ数年で臓器保存方法が改善したため、今まで使っていなかったDCD臓器の使用はどんどん増えている。そのいっぽうで、1年グラフト予後は低下していない。
また、2025年7月からは全国半数の移植施設でMedicare主導のIOTA(Increasing Organ Transplant Access)モデルが採用される。移植件数(Medicare患者か否かを問わず)を増やすほどインセンティブがもらえる施策で、「いきなり増やせと言われても人員や体制などが整わない」などの課題はあるが、うまくやれば起爆剤になるとも期待されている。IOTA(アイオータ)は会議でbuzzwordsの一つだった。
正直私も、こういった説明を聞くまでは「non-useの数が増えているなんて!」という意見だった。だから、こういった説明は広くpublicizeされるべきだと思った。・・そして、publicizeもこの会議のテーマの一つだった(keynoteで詳しく述べられ議論されていた)。