3/15/2025

ESBL and Bactrim

 抗菌薬の使用はどんどん短くなる傾向にあって、昨日NEJMに掲載された(発表自体は昨年11月)菌血症に対する抗菌薬7日と14日を比較した非米国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等)によるBALANCE試験では、両者に90日死亡率の有意差はなかった。ただし、MRSAや免疫抑制患者は除外された。

 腎移植後でもっとも多い細菌感染症のひとつ腎盂腎炎も、治療期間は14日間が主流になりつつある(最新のガイドラインは2-3週間としている)。7日と14日を比較する試験もフランスで行われている。そんなことをしたら再発するのではないか?という心配はもっともだが、その場合には長期間(6ヵ月、終生など)のsuppressionを行うこともある。

 それにしても、移植後腎盂腎炎ではESBL KlebsiellaとESBL E Coliを診る機会が本当に多い。自施設に限った話ではなく、世界的に増えているという。術後すぐに腸細菌叢に見つかるという報告もある。困ったことである。

 IDSAはESBLの第一選択をSMZ/MTXに変更した。しかし、移植患者では第一選択はカルバペネムである(セフメタゾールはない)。退院後は、カフ付き中心静脈カテーテルを留置してエトラペネムを継続するか、経口でフルオロキノロンかSMZ/TMPになる。ニトロフラントインもあるが、あまり有効ではないため用いられない。つまり、選択肢が少ない。

 フルオロキノロンとSMZ/TMPだったら、感染症科的にはフルオロキノロンを取っておいて、SMZ/TMPを推奨するだろう。

 しかし、腎臓内科的には、SMZ/TMPはクレアチニン排泄抑制とK排泄抑制を起こすので、治療量で用いると結構派手にCrとKが上昇することがある。そのため、使うからにはCrが上がっても慌てず、Kが上がったらロケルマ(あるいはVeltassa)・・と、覚悟しておかないといけない。

 ESBLに有効な新しい経口薬(Pivmecilinam、Sulopenem-etzadroxil-probenecidは2024年に承認、Gepotidacinは2025年に承認予定)もあるが、どういうわけか(マーケティングの事情か)いずれも適応はuncomplicated UTIなので、注意して使わないと耐性ができて大変なことになるかもしれない。