急性抗体関連拒絶(ABMR)の所見が組織にあっても、抗ドナーHLA抗体(DSA)が見つからない、ということはよくある。「血中にないのは、抗体がすべて組織に吸着してしまったからだ」というもっともらしい仮説を聴くこともあるが、非HLA抗体によるABMRなのかもしれない。
非HLA抗体には抗AT1R抗体、MHAクラスI関連A鎖(MICA)、抗Vimentin、抗LG3などいくつかあるが、基本的には内皮細胞またはその周囲にある抗原に対する抗体である(KI 2021 100 787)。だから、ドナー内皮細胞とレシピエント血清のクロスマッチを行うと、非HLA抗体があるかが判定できる。
・・らしい。まだ一般的な診療になっていないので、やっている施設ばかりではない(会議で他施設の発表を聞くまで知らなかった)。また、個々の非HLA抗体についても、ELISAだったりSABだったり、色々だ。自施設は最も有名な抗AT1R抗体を外注で調べるが、施設によってはパネルで複数調べることもできるらしい。
非HLA抗体の標的抗原は、内皮細胞に関連する分子であり、それはドナー特異的なのか?というのは、議論がある。たとえば抗AT1R抗体は、自己抗体としてpre-eclampsiaの病原となることが知られている。ただ、自己抗体であれドナー抗原に特異的な抗原であれ、治療は同じだ。