CMVの予防内服はリスクによって異なり、施設にもよるが高リスク(D+/R-)でvalganciclovir 900mg1日1回を6ヵ月、中リスク(R+)でvalganciclovir 900mg1日1回を3ヵ月、低リスク(D-/R-)でacyclovir 400mg1日1回を3ヵ月などと決まっている。
治療用量はvalganciclovir 900mg1日2回ないし静注ganciclovir 5mg/kg1日2回。腎用量はCrCl 40以上60未満ml/minで valganciclovir 450mg1日1回、25以上40未満で450mg隔日(または週3回)、10以上25未満で450mg週3回、10未満またはHDで100mg週3回(透析後)、CRRTで静注ganciclovir 2.5mg/kg1日1回。
ganciclovirは1988年、valvanciclovirは2001年から使用されているが、いずれもCMV DNA polymeraseの阻害薬である。理想の世界ではウイルスのDNAのみに作用するはずであるが、現実の世界では宿主細胞のDNAにも作用し、とくに骨髄抑制が問題になる。
代替薬には、LetermovirとMaribavirの二つがある。
Letermovirは造血細胞移植レシピエントのCMV予防内服に対して2017年に承認された。CMVのエンベロープにCMV1個分のDNAを切り取って注入するterminase complexを阻害する。
出典はViruses 2019 11 219 |
他の臓器移植患者に対しては未承認だが、昨年CMVハイリスクの腎移植レシピエント601人をvalganciclovir群(900mg1日1回)とletermovir群(480mg1日1回、CMV以外のヘルペスウイルス予防にaciclovir 400mg1日2回を併用)を比較した試験結果が発表された(JAMA 2023 330 33)。
結果、52週までのCMV疾患は両群とも約10%で、letermovir群はvalganciclovir群に対して非劣性であった。そして好中球減少はletermovir群で2.7%で、vaganciclovir群の16.5%よりも有意に少なった。Letermovir群で多かった有害事象は下痢、振戦、尿路感染症だが、これらはvalganciclovir群と同程度だった。
なお、原疾患や免疫抑制レジメンなどは両群間で調整されたが、letermovirはCYP3A4を阻害するため、CNIやmTOR阻害薬の減量が必要になる。逆に、シクロスポリン内服患者ではletermovir用量を半減しなければならない(シクロスポリンがOAT1B1/3を阻害するため)。Double-masked, double-dummyではあるが、用量調節で患者がどちらの群か分かった可能性はある。
いずれにせよ、骨髄抑制でvalvanciclovirを中止せざるを得ない患者には新しい選択肢として使用が広がっている。
Maribavirは、pUL97 kinase inhibitorであるが、同種幹細胞移植患者の予防内服で第三相試験がアウトカムを達成できなかったため、他薬に不応のCMV感染に対する治療薬として2021年に認可された。