すると、どういうわけか患者が「君はどこの国の出身だい?」と言った。そして日本だと答えると、「君は王と4人の妻の話を知っているか?いつかGoogleで調べるといい」と言った。そして、調べる前に話をすっかり教えてくれた。彼のバージョンは次のようなものだった(もとは四婦喩経という仏教の説教のようだ)。
死期を悟った王が、一人で死ぬのがさびしくて4人の妻に一緒に死んでくれないかと頼んだ。
最も愛する何でも買い与えた4番目の妻は、何も言わずに去った。最も自慢のどこにでも連れて行った3番目の妻は、「この世が好きなのであなたが死んだら再婚します」と言った。最も信頼していた2番目の妻は、「申し訳ないけれど無理です、葬式はしてあげます」と言った。
しかし、最も尽くしてくれていたが王がまったく顧みることのなかった1番目の妻が「いつまでもどこまでも一緒に行きましょう」と言った。王は、「そんなことならあなたをもっと大切にすればよかった」と言った。
4番目の妻は身体、3番目の妻は所有(財産、地位、名誉など)、2番目の妻は家族の比喩である。いずれも、あの世に持っていくことはできない。そして1番目の妻は、患者によればsoulの比喩だという。
なぜ患者がこの話をしたのか?彼の見たこの説話の動画にでてくる東洋人の雰囲気に私が似ている、というような話だった気がする。ただ、なぜあのタイミングで話し始めたのかはわからない。おたがい前回入院時から知っていたので、関係ない話もしやすかったのだとは思う。
患者は翌日退院した。まさに、一期一会である。もちろん、再入院しないことを願う。