9/25/2024

CMV-TCIP and ALC

  移植前にワクチンをたくさん打っておくことからもわかるように、移植後の免疫抑制で各種ウイルスに対する免疫が完全にワイプアウトされてしまうわけではない。ただ、ワクチンは主に液性免疫(抗体を産生するB細胞)の話で、移植後のCMV感染により関連するのは細胞性免疫(T細胞)である。

 移植後の免疫抑制下で、CMVに対してどれくらい細胞性免疫が残っているのかがわかれば、患者ごとのリスク評価に役立つ。

 たとえば、Quantiferon®‐CMVアッセイは、全血を21のCMVエピトープに曝露し、活性化されたCD8+T細胞が放出したINF-γを測定する。

 T-Track CMV®、T-SPOT®‐CMVアッセイは、末梢単核細胞(T細胞やNK細胞を含むざっくりした集まり)を取り出し、さまざまなCMV抗原やCMV分解産物に曝露し、活性化された細胞が放出するINF-γを測定する。

 これらのほかに、米国で用いられているのがViracor® CMV T-cell Immunity Panel(CMV-TCIP)である。これは全血をCMVペプチドと分解産物に曝露させたあとでフローサイトメトリーを用いてCMV特異CD4+T細胞とCD8+T細胞※の割合を測定する。

 ※CMVに反応したT細胞はCD69とIFNγを表出するはずなので、それらに対する蛍光標識した抗体を用いる(下図、上段はCD4+、下段はCD8+、左は陽性例、右は陰性例)。

(出典はBMC Infectious Diseases 2020 20 58)

 使い方はさまざまで、CMV感染の治療後にどれくらい免疫があるかを再発リスクの評価につかう場合や、移植後に測定してCMV発症リスクや予防投薬の必要性を評価する場合(Transpl Infect Dis 2014 26 e14291)などに試されている。

 ただ、これを毎月測るのと、CMV-PCRを測るのと、だいたいで何か月と期間を決めて予防内服するのと、どれがもっとも費用対効果が高いかは、まだ一概には言えない。

 そのため、最も安価かつ簡便として注目されているのがリンパ球数(absolute lymphocyte count, ALC)である。血算・分画にもれなくついてくる。日本からの報告もあり、導入にthymoを用いないこともあり高めのカットオフだが、移植後4週のALCが1100/mm3以下と以上で、CMV発症を区別した(Trans Proc 2023 55 1594)。